DNAメチル化は転写開始・伸長を制御しているが、転写終結位置における機能は不明なままである。私達は、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュ変異体及び、Dnmt3aノックアウトマウス細胞(胎児線維芽細胞MEF・神経細胞)を用いて直接の標的であるゲノム領域の解析を行った。その結果、タンパク質コード遺伝子のTranscription termination site(TTS)が低メチル化しており、転写終結異常(読み通し転写)が起こっている事を世界で初めて報告する事に成功した。しかし、転写終結異常が起こっているにも関わらず、Dnmt3a欠損ゼブラフィッシュ変異体は明確な発生異常を示さないため、発生過程における転写終結異常の役割に関しては未だ不明なままである。そこで本研究課題の最終年度では、Dnmt3a欠損ゼブラフィッシュ変異体において発現変化している転写産物の網羅的探索を研究目的に、実験・発現解析を行った。 本年度は、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュの遺伝子発現解析を行い、1-2細胞期・原腸陥入期・5体節期・受精後1日・受精後2日胚において発現に差がある転写産物を、マイクロアレイを用いて詳細に解析を行った。その結果、5つ初期発生段階において、有意な発現変化を示す遺伝子(1-2細胞期:18666遺伝子・原腸陥入期:4140遺伝子・5体節期:7581遺伝子・受精後1日胚:7876遺伝子・受精後2日胚:4804遺伝子)を明らかにする事に成功した。今後は、発現異常を示す転写産物と、転写終結異常(読み通し転写)を起こしている遺伝子との関連を明らかにする事により、転写終結異常の生物学的意義を明らかにする事を目指す。
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