研究実績の概要 |
多細胞生物の核内でスプライシングなどを担う核スペックルが、細胞周期や核内環境に応じて示す様々な形態変化の機序を考察するため、その主要成分である天然変性タンパク質SRRM2やSON、非コードRNAであるMALAT1, 及びpre-mRNAの粗視化分子動力学モデルを構成し、シミュレーションにより核スペックルの形態変化の再現を試みた。そして実験結果を再現できる実効的な分子間相互作用を見出し、それら主要成分間による形態制御の機序を説明した。 多くの動物種で保存されているタンパク質 CTCF は、これまで哺乳類などの研究から、ゲノムの局所的なループ構造形成を促し区画化することで、間期染色体構造を制御していると考えられてきた。一方、哺乳類などと異なる旧口動物では、CTCF以外にも同様の役割を持つ分子が知られ、その役割が異なる可能性があった。そこで進化系統樹上で旧口動物と新口動物の分岐点近傍にある新口動物ウニのCTCFの機能を解析し、その機能と進化的側面を考察した。その結果、ウニでは CTCFは間期ではなく細胞分裂期後期において分裂期を終える際に必須であることが見出され、また配列の旧口動物CTCFとの類似性から、それがCTCFの古来からの機能であることが示唆された。 白い被毛をもつイエネコは、白い被毛を持たないネコと異なり、KIT遺伝子の第一イントロンにFERV1と呼ばれるウィルス由来配列を持ち、また真っ白な被毛のネコには、そのうちFERV1-LTRのみを持つ。このFERV1-LTRの特性を調べた結果、この配列はCTCF結合部位を6回繰り返す領域を含むこと、それによるゲノムの区画化により、白い被毛を持つネコでは第一エクソンを欠失した KIT (d1KIT) が転写されること、d1KIT の転写が SOX10 の転写を阻害し、白いネコ固有の難聴を引き起こす原因となる可能性が見出された。
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