研究課題/領域番号 |
21K06127
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
石野 知子 (金児知子) 東海大学, 医学部, 教授 (20221757)
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研究分担者 |
松本 裕 東海大学, 医学部, 講師 (80609230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 獲得遺伝子 / SIRH/RTL遺伝子 / 脳機能 / レトロトランスポゾン / GAGタンパク質 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
我々は哺乳類特異的なウイルス由来の獲得遺伝子群(Sirh 遺伝子群)11個を発見し、進化の過程でゲノムに飛びこんだウイルスDNA断片が遺伝子として利用され、哺乳類の進化に関わっているという進化モデルの概念を提唱している。11個の遺伝子の機能解析を順次進めており、これらの獲得遺伝子の機能は哺乳類の特徴に関わっていることを示し続けている。実具体的には、ノックアウトマウスの解析からPeg10、Peg11は胎盤の構造に、Sirh7は胎盤のホルモン(プロゲステロン)の分泌調節に関わっており、これらの獲得遺伝子が哺乳類の胎生を支えていることを証明した。 一方、Sirh3、Sirh8、Sirh11はノックアウトマウスの解析から行動異常が見られ、その発現部位からも脳機能に関係していると予測された。特に、Sirh11遺伝子は脳内モノアミンであるノルアドレナリンの分泌制御に関わっていることをすでに論文で報告している。Sirh3、Sirh8、Sirh11の3遺伝子はいずれも発現量も少なく、抗体での検出も困難であるため、各遺伝子に蛍光タンパク質のVenusやmCherry遺伝子をつなぎ、複合タンパク質として検出するノックインマウスを作製した。ノックインマウスの脳の画像解析の結果、Sirh3遺伝子は脳内のミクログリアで発現していることを突き止めた。ミクログリアでのSIRH3タンパク質の機能を追求するとともに、Sirh8、Sirh11のノックインマウスの解析を進め、発現部位(細胞)の同定を進めている。また、Sirh3とSirh8は遺伝子の構造が似ているため、これらが協調して脳内で働いている可能性も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sirh8遺伝子に蛍光タンパク質mCherryをつないだノックインマウスを作製し、様々な発生ステージの脳での発現を解析した。その結果発現場所が脳内ミクログリアであることを明らかにできた。同じSirh遺伝子群であるSirh3遺伝子もミクログリアで発現していることから、この2遺伝子の関係性についても解析をすすめ、脳内ミクログリアの新しい機能を発見した。しかし、21年度の夏以降は研究科の都合で、全く研究テーマが異なる院生の指導に関わらざるを得なかったっため、当初自分が予定していた目標まで研究を進めることができなかったので区分は(2)となった。
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今後の研究の推進方策 |
Sirh8遺伝子のミクログリアでの機能がSirh3遺伝子の機能がどのように関わるのかを解明していく。Sirh11遺伝子に蛍光タンパク質Venusをつないだノックインマウスが作製できたので、その遺伝子の脳での発現解析を蛍光顕微鏡で行い、発現に関わる細胞を特定する。特定できた場合は、Sirh11遺伝子の発現を活性化できる要因を検討する。要因の検討には、我々のSirh11論文「Cognitive Function Related to the Sirh11/Zcchc16 Gene Acquired from an LTR Retrotransposon in Eutherians」PLoS Genetics(2015)での解析結果を参考にする。また、SIRH11タンパク質と複合体を形成するタンパク質を脳内から免疫沈降により検出し、質量分析により同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Sirh8とSirh11のノックインマウスを作製したが、1~2匹しか生まれなかったため、その1~2匹からスタートしてコンスタントに実験に使用できる集団にまで繁殖させるのに2~3世代(半年以上)はかかっている。そのため、消耗品等の発注が抑えられ、次年度使用額が生じている。 次年度は、ノックインマウスの画像解析、免疫染色、細胞培養などに関わる抗体、試薬、培地などの消耗品、およびそれらの実験のサポートのための実験補助員への謝金等で使用する計画である。
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