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2023 年度 実施状況報告書

脳機能に関わる哺乳類特異的獲 得遺伝子群の解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06127
研究機関東海大学

研究代表者

石野 知子  東海大学, 医学部, 客員教授 (20221757)

研究分担者 松本 裕  東海大学, 医学部, 講師 (80609230)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード哺乳類特異的獲得遺伝子 / SIRH/RTL遺伝子群 / 脳機能 / 自然免疫 / ミクログリア / Sirh10/Rtl9 / 真菌 / Sirh11/Rtl4
研究実績の概要

ウイルス由来と考えられる哺乳類特異的遺伝子Sirh10/Rtl9は、ウイルスのGag遺伝子部分を共通にもつ11個の遺伝子群(我々はSirh遺伝子群と呼んでいる)のうちのひとつである。我々は同じ遺伝子群のPeg10、Peg11/Rtl1、Sirh7の3遺伝子は哺乳類の胎生に必須である胎盤の形成・機能維持・妊娠に関わるホルモン量のコントロールなどに重要であることを解明し、論文で報告している。哺乳類になって獲得した新しい遺伝子がほ哺乳類の特徴に関わっているという具体例を示すことができたと考えている。また遺伝子群内のSirh3/Rtl6・Sirh8/Rtl5は胎盤の形成・機能には無関係であったが脳で発現し、Sirh3遺伝子の後ろに蛍光タンパク質のVenus遺伝子をつないだノックインマウスとSirh8遺伝子の後ろに蛍光たんぱく質mCehrryの遺伝子をつないだノックインマウスの解析から、脳の免疫細胞であるミクログリアで発現することがわかった。タンパクの挙動を共焦点レーザー顕微鏡で解析したところ、Sirh3は細菌のLPS(リポポリサッカライド)と結合して凝集し、Sirh8は2本鎖RNAと結合して凝集し、遺伝子ごとにターゲットとなる感染源が異なり、脳内における感染防御(自然免疫)に関わることを解明した。23年度はSirh遺伝子群のSirh10/Rtl9遺伝子にmCehrryの遺伝子をつないだノックインマウスの解析から、Sirh10タンパク質はやはりミクログリアで発現し、真菌類を認識して機能していることを見出し、論文で発表した。進化の過程で獲得したウイルス由来の遺伝子が細菌・ウイルス・カビなどの感染源に対抗するように機能分化したと考えられる。さらにSirh11/Rtl4-Venusのノックインマウスの解析を行い、Sirh11もミクログリアで発現することを突き止め、機能解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

脳の自然免疫に働く3つのウイルス由来の獲得遺伝子、Sirh3/Rtl6・Sirh8/Rtl5・Sirh10/Rtl9について、機能を解明し論文として発表した。哺乳類特異的なウイルス由来(ウイルスのGag部分に相同性がある)の遺伝子が脳内の感染を防御するような機能を持っていたことは、世界的にも新しい発見である。

今後の研究の推進方策

Sirh/Rtl遺伝子群のひとつであるSirh11/Rtl4は脳で発現しており、ノックアウトマウスの解析では行動異常が見られている(2014年論文発表済み)。2023年度の研究で、Sirh11遺伝子がミクログリアで発現していることはわかってきたが、脳の自然免疫に関わっているかどうかは不明である。Sirh11/Rtl4の脳での機能を明らかにし、論文として投稿することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

2023年度中に論文投稿が間に合わなかったため、論文投稿後のリバイス実験の費用として次年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Retrovirus-Derived RTL9 Plays an Important Role in Innate Antifungal Immunity in the Eutherian Brain2023

    • 著者名/発表者名
      Fumitoshi Ishino, Johbu Ito, Masahito Irie, Ayumi Matsuzawa, Mie Naruse, Toru Suzuki, Yuichi Hiraoka and Tomoko Kaneko-Ishino.
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: -

    • DOI

      10.3390/ijms241914884

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Retrovirus-Derived RTL/SIRH: Their Diverse Roles in the Current Eutherian Developmental System and Contribution to Eutherian Evolution2023

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Kaneko-ishino and Fumitoshi Ishino
    • 雑誌名

      Biomolecule

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.3390/biom13101436

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Roles of retrovirus-derived PEG10 and PEG11/RTL1 in mammalian development and evolution and their involvement in human disease2023

    • 著者名/発表者名
      Hirosuke Shiura, Moe Kitazawa, Fumitoshi ishino, Tomoko kaneko-ishino
    • 雑誌名

      Frontier in Cell and Developmental Biology

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fcell.2023.1273638

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 胎盤形成と機能に関わるレトロウイルス由来の遺伝子について2023

    • 著者名/発表者名
      石野史敏、金児-石野知子
    • 学会等名
      第68回日本生殖医学会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 真獣類特異的レトロウィルス由来遺伝子 Sirh4,5,6 の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      藤岡慶史、志浦相寛、石井雅之、小野竜一、遠藤 墾、平手良和、伊藤日加瑠、金井正美、金児-石野知子、石野史敏
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会 シンポジウム
  • [学会発表] レトロウイルス由来PEG10遺伝子の新規機能と哺乳類進化への関与2023

    • 著者名/発表者名
      志浦寛相、藤井万由子、片口紗那、安藤史竜、中島望、大我政敏、若山照彦、幸田尚、金児-石野 知子、石野史敏
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] レトロウイルス由来のRTL/SIRH遺伝子群による真獣類脳の自然免疫機構の進化-RTL9/SIRH10の真菌に対する脳の自然免疫機能-2023

    • 著者名/発表者名
      石野史敏、伊東丈夫、入江将仁、松沢歩、金児-石野知子
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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