研究課題/領域番号 |
21K06144
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梅津 大輝 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (60620474)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Toll受容体 / 上皮組織 / ショウジョウバエ / 位置情報不適合 / 細胞排除 / 発生ロバストネス / 組織恒常性 |
研究実績の概要 |
上皮組織は恒常性を維持するために常に組織の状態を監視し、突然変異などによって異常な細胞が生じた場合に、それらを直ちに排除する仕組みを備えている。特に、組織形成過程においては、周囲の細胞と位置情報が適合しない細胞は組織から分離・排除されることが示されている。しかし、この過程において細胞同士がどのようにして異常か正常かを認識しているのかは明らかになっていない。この問題に取り組むためにライブイメージングによる細胞動態の解析が可能なショウジョウバエの腹部上皮組織をモデルとして用いた。細胞間の認識に重要な機能を果たすと考えられるToll受容体の上皮組織における機能が近年注目されている。Toll受容体は上皮組織においてダイナミックな発現パターンを示す。本研究では、複数のToll受容体が同一組織内の異なる領域で発現しているという独自の知見に基づき解析を進めた。ショウジョウバエゲノムに9つあるToll受容体のうち、腹部上皮組織で発現する4つのToll受容体に注目し、独自に作成したVenus蛍光タンパク質のノックイン系統を用いて発現パターンの詳細を解析した。それにより、4つのToll受容体が少しずつオーバーラップしながらもそれぞれが異なる領域で発現していることを示した。現在は、Toll受容体のノックインを保持する系統で体細胞クローン解析を行うことができる系統を作成中である。また、複数のToll受容体に対するshRNAを同時に発現し、ノックダウンすることができるショウジョウバエ系統を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他の研究プロジェクトで雇用していた技術補佐員に欠員が出てしまい、研究代表者の本プロジェクトに対する研究従事時間を十分に確保できない状況となった。そのため、必要なショウジョウバエ系統の作成に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
技術補佐員や学生アルバイトなどを採用してルーチンで行うことができる実験補助業務を分担してもらい、研究代表者の負担を軽減する。ショウジョウバエ腹部上皮で発現する4つのToll受容体遺伝子について、機能阻害、もしくは過剰発現する体細胞クローンを組織内に作出し、それぞれの遺伝子発現の不連続性が細胞集団の分離と排除にどのように寄与するかを明らかにする。また、Toll受容体遺伝子の発現を制御する上流遺伝子を同定するために、上皮組織のパターン形成で機能するTGF-beta、Wnt、Hedgehogなどのシグナル伝達経路の変異体の体細胞クローン解析を行う。以上から、位置情報を細胞表炎認識コードに変換する仕組みを解明する。2021年に本研究計画に関連する論文が国外の研究グループによって発表され、その論文では本研究で注目しているToll受容体の一つ、Toll-8の上皮組織における機能を解析している。Toll-8遺伝子の発現量の違いによって、発現の異なる細胞の接する境界面においてアクトミオシンが集積することを示している。本研究における予備実験においても同様の結果が得られていた。解析結果は同様のものであるが、視点が異なるため本研究計画の大きな変更の必要はないと考えている。
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