研究課題/領域番号 |
21K06145
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
須田 恭之 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10553844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胞子形成 / 減数分裂 / 膜交通 / 小胞体 / ERES / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
出芽酵母の配偶子形成である胞子形成では、減数分裂を経た1倍体の核は前胞子膜と呼ばれる膜構造の内へと分配され、4つの胞子が細胞内に形成される。前胞子膜は、小胞体からゴルジ体を経て細胞膜へと輸送する膜交通の分子機構が再構成され、ゴルジ体からの小胞輸送により細胞内に新たに生み出される膜構造である。この過程では膜交通の出発地点となる小胞体は減数分裂における核膜形態の変化に応じて大きく変化するが、この小胞体の形態変化やERESを胞子内へと分配する分子機構は未だ明らかになっていなかった。本研究は小胞体機能ドメインERESの形態変化と胞子への分配を司る分子機構を明らかにすることを目的として行った。本年度は下記計画課題について研究を実施した。 #オルガネラ分配を制御する機構の解析 前年度までの研究結果からERES形成を司る分子群がPP1による脱リン酸化を通じ制御される可能性が考えられた。そこでPP1サブユニット欠損株において、ERES形成を司る分子群の局在や翻訳後修飾を解析したところ、ERES形成に必須な分子の減数分裂・胞子形成の進行における局在変化に影響があることを見出した。 また、ERES形成を司る分子群の変異体を作製し、PP1サブユニット欠損株におけるERES分配不全と似た表現型を示すか検討し、有力な候補を取得した。 新たにER-ゴルジ体のライブイメージングを野生株、変異株にて行い、定量データを取得し、変異株では分泌経路を形成するオルガネラ群の挙動に影響があるか解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胞子内へのERES分配には1型プロテインフォスファターゼ(PP1)が重要な働きを担うことを見出した。前胞子膜形成におけるPP1の役割としては胞子形成時特異的セプチン構造の形成が挙げられるが、セプチン構造形成とERES分配との関係性を見出すことはできず、それぞれ独立して制御されていると考えられる。 PP1がERES形成を司る分子群に直接的に働きかけている可能性を考慮し解析を行った結果、ERES形成に必須な分子の局在がPP1により制御されていることを見出した。さらにPP1サブユニット欠損株の表現型を模倣する欠損株を新たに取得した。 またER-ゴルジ体のライブイメージングを行うことにより、減数分裂・胞子形成における分泌経路を形成するオルガネラ群の変化について解析することが可能となった。上述の変異株にて同様に解析を行い、減数分裂・胞子形成時に分泌経路をどのように制御され、前胞子膜という新生膜を生み出しているのか明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
COPII形成を司る因子群のリン酸化を中心とした翻訳後修飾について解析を行う。これまでに取得した結果を統合し、ERES分配と前胞子膜形成に関するモデルを構築する。 当初計画とは異なるが、リン酸化プロテオミクスにて得られたセプチン分子などPP1のターゲットについて、変異体作製と表現型の解析を行うことによりそのリン酸化の意義を見出し、派生する研究の予備データ取得とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品として計上していたが使用しなかったため。次年度の実験に関わる消耗品に追加し、適切に使用していく。
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