研究課題
小胞体-ミトコンドリア接触領域(EMCSs)は、カルシウムイオン輸送や脂質輸送などの細胞活動においての重要な役割を果たしていることが明らかにされてきているが、生細胞中でのEMCSsの定量やダイナミクスの解析は進んでいない。本研究では、2量体型蛍光タンパク質を利用したプローブを用いてEMCSsのライブセルイメージングを行い、そのダイナミクスを解析し、その制御機構とEMCSsが関与する生理機能のメカニズムの解明を目指す。特に、EMCSのダイナミクスとその機能の発現との相関を解析し、カルシウムイオン輸送の制御機構の分子基盤の解明を目指す。今年度、上記のプローブを用いてEMCSsを培養細胞においてライブイメージングし、そこでミトコンドリアの分裂やカルシウムイオンの受け渡しなどが行われているか確認した。また、EMCSs量を亢進させることが報告されている小胞体ストレス負荷時に可視化したEMCSsの動態がどのように変化するのか解析した。その結果、ミトコンドリアとEMCSsを同時観察したところ、EMCSsは生成・消滅を繰り返しながら、ミトコンドリアとともに細胞内を移動し、かつ、相対的にミトコンドリア上を移動する様子も観察された。また、報告されているようにEMCSs上でミトコンドリアの分裂が開始する様子も観察された。ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度のプローブと同時観察したところ、リガンド刺激により細胞内カルシウムイオン濃度上昇を誘導するとEMCSsにおいて局所的にミトコンドリアのカルシウムイオン濃度が上昇していることが観察された。また、小胞体ストレス負荷により、EMCSsの蛍光シグナル量が増加することが分かった。以上の結果から、ライブイメージングされたEMCSsは生理的機能を保持したものを可視化していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ順調に解析を進め、実験手法の信頼性を支持する結果を得ている。また、研究計画の他の予定項目も着実に進行している。
2022年度は、可視化したEMCSsが小胞体上に存在しているか?確認するとともに、その生成・消滅に関与する分子やシグナルの解析を進める。具体的には、①薬理学的処理やsiRNA法により、細胞骨格関連分子やシグナル系の機能を阻害しEMCSsの動態に対する影響を解析する。また、②小胞体ストレス負荷時の影響も検討する。このほかに、アミロイドβペプチドに誘導される細胞死にEMCSsの関与が報告されているので、その条件下でのEMCSsの動態の解析も進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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