研究課題/領域番号 |
21K06149
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 剛 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (40402565)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オルガネラ接触領域 / ダイナミクス / 可視化解析 / ミトコンドリア / 小胞体 |
研究実績の概要 |
小胞体-ミトコンドリア接触領域(EMCSs)は、カルシウムイオン輸送や脂質輸送などの細胞活動においての重要な役割を果たしていることが明らかにされてきているが、生細胞中でのEMCSsの定量やダイナミクスの解析は進んでいない。本研究では、2量体型蛍光タンパク質を利用したプローブを用いてEMCSsのライブセルイメージングを行い、そのダイナミクスを解析し、その制御機構とEMCSsが関与する生理機能のメカニズムの解明を目指す。特に、EMCSのダイナミクスとその機能の発現との相関を解析し、カルシウムイオン輸送の制御機構の分子基盤の解明を目指す。 今年度、アルツハイマー病の発症に関わるアミロイドβペプチド(Aβ)のEMCSsの動態に対する影響を解析した。Aβは凝集し細胞内にカルシウムイオンを流入させ細胞死を誘導する。その際、ミトコンドリア・カルシウムイオン濃度も上昇させることが報告され、Aβ誘導の細胞死に寄与する可能性が示唆されている。アルツハイマー病モデル動物やAβを作用させた細胞では、EMCSs量や構成分子の発現が亢進していることから、Aβ作用においてEMCSsの関与が注目されている。実際、培養細胞にAβ刺激を行うとミトコンドリア内カルシウムイオン濃度の緩やかな上昇とともにEMCSsのシグナル量増加が誘導された。詳細な解析によりEMCS数の増加とともに個々のEMCSsが大きくなっていることができた。すなわち、EMCSsが変化しミトコンドリアへのカルシウムイオン移動を増強していると考えられている。この他、ミトコンドリアへのカルシウムイオンの移行を担うミトコンドリア・カルシウム・ユニポーターの機能阻害が、線虫の加齢やジストロフィー症モデルでの体壁筋機能減退を抑えることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に解析を進め、EMCSのダイナミックな動態を可視化に成功し、その制御機構の解析に着手している。また、研究計画の他の予定項目も着実に進行し、重要な知見も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、EMCSsの生成・消滅に関与する分子やシグナルの解析を進めるとともに、アミロイドβペプチド刺激時のEMCSsの動態の解析を進める。また、小胞体ストレス負荷時やサイトカイン等の刺激の影響も検討する。特に、EMCSsの動態制御への関与が予想される細胞骨格関連分子やシグナルを重点的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の試薬が欠品したため納入が遅れ、当該年度の執行額が減り次年度の使用額が生じた。次年度早期に試薬を購入する予定。
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