小胞体-ミトコンドリア接触領域(EMCSs)は、カルシウムイオン輸送や脂質輸送などの細胞活動においての重要な役割を果たしていることが明らかにされてきているが、生細胞中でのEMCSsの定量やダイナミクスの解析は進んでいない。本研究では、2量体型蛍光タンパク質を利用したプローブを用いてEMCSsのライブセルイメージングを行い、そのダイナミクスを解析し、その制御機構とEMCSsが関与する生理機能のメカニズムの解明を目指す。特に、EMCSのダイナミクスとその機能の発現との相関を解析し、カルシウムイオン輸送の制御機構の分子基盤の解明を目指す。 今年度、細胞の機械刺激受容時の応答の解析を進め、その過程で、ミトコンドリアが機械刺激に応じて、オルガネラ内カルシウムイオン濃度を10~100倍程度上昇させることを見出だした。リガンド刺激などで細胞内カルシウムイオン濃度が一過的に上昇した際もミトコンドリアのカルシウムイオン濃度が上昇するが、その応答は一過的に短時間でミトコンドリア全体に見られる。一方、機械刺激に誘導された場合、カルシウムイオン濃度が均一に上昇するのではなく0.01 mM以上に上昇するスポット状の部位がミトコンドリアに長時間増えていることが判った。このカルシウムイオン・スポットの増加は、ミトコンドリア・カルシウムユニポーターの発現抑制や小胞体のカルシウムイオンを枯渇させると抑えられたことから、小胞体からミトコンドリアへEMCSsを介したカルシウムイオン流入を反映していると考えられた。実際、EMCSsの可視化解析すると、刺激に応じEMCSs量が増加し、それに合わせてミトコンドリアのカルシウムイオン・スポットも増加していた。従って、刺激によりEMCSsが影響を受け、カルシウムイオン移動が変調している可能性が示された。
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