研究課題/領域番号 |
21K06151
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 洋平 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40646733)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オートファジー / 小胞体サブドメイン / オルガネラサイズ / 分子シャペロン |
研究実績の概要 |
細胞小器官(オルガネラ)には固有の大きさがあり環境に応じて、その大きさは厳密に制御されている。例えば、タンパク質の合成の場である小胞体はタンパク質合成が盛んな状況ではその体積を増加させ、不要になった際には元の大きさに戻ることが知られている。細胞内のタンパク質の大規模分解に必須なオルガネラであるオートファゴソームも例外ではない。また、それらの破綻は神経変性疾患をはじめとする種々の疾患へと繋がる事も明らかになっている。このようなオルガネラのサイズ調節機構、特にオートファゴソームの大きさがどのように制御されているのか?このことを明らかにするための研究課題である。オートファゴソームのサイズがどの様に制御されているのか、我々はその制御に関わり小胞体の特異的領域(小胞体サブドメイン)に局在するERdj8を同定した(Yamamoto Yo-hei et al.,JCB 2020)。本研究課題は、細胞内に生じた大小様々な大きさの分解基質を隔離するオルガネラであるオートファゴソームのサイズの制御に関わるERdj8による制御メカニズムを明らかにすることを目的としている。ERdj8は小胞体に存在し、さらにその特異的領域である小胞体サブドメインに局在するCEPT1との共局在する結果が得られていたことから、小胞体サブドメインにおいて、リン脂質の合成および、オートファゴソームへの供給をERdj8が制御することで、オートファゴソームのサイズを調節することが予想された。そこで、本年度では、まずERdj8が小胞体におけるリン脂質の合成に影響を及ぼすかどうかについて検討した結果、ERdj8の細胞内発現量を減少させるとホスファチジルコリンの合成量が減少する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画に記載していたERdj8とリン脂質合成酵素の関係を明らかにするために計画したERdj8のノックダウン及びノックアウト細胞を用いて、細胞内のホスファチジルコリンの新規合成への影響を観察した。その結果、ERdj8の細胞内発現量を減少させるとホスファチジルコリンの合成量が減少する結果が得られた。また、ERdj8とホスファチジルコリンの共局在も観察された。 さらに、小胞体で起こるリン脂質の合成にERdj8が影響を与えるという結果が得られたことから、リン脂質と同様に小胞体膜で合成される脂肪滴への影響についても観察した。その結果、ERdj8の発現量を抑制した結果はリン脂質だけではなく、脂肪滴にも影響を及ぼす結果が得られた。これは、小胞体膜の特異的領域(小胞体サブドメイン)においてERdj8がオートファゴソームだけではなく、細胞内の脂質貯蔵に重要なオルガネラである脂肪滴にも重要な働きを示すことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ERdj8の超近傍で機能する相互作用因子の同定を進めて行きたい。さらに、最近ERdj8が含まれるファミリータンパク質の相互作用因子を網羅的に解析した論文が発表された(Hammond et al., Mol Cell 2021)。本研究課題で行う予定である相互作用因子同定法と同じ方法で行われていることから、この論文の結果を参考にして、ERdj8との結合因子の同定を行なっていく。事実、想定していた複数のタンパク質がその結果に含まれていたことから、それらについて解析を進めていく。また同時に同方法を用いて、ERdj8の変異体での結合因子を野生型と比較して、ERdj8の機能解析を進めていく。 さらに、ERdj8とホスファチジルコリンの共局在結果が得られたことから、予定通り電子顕微鏡解析も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、当初予定していた実験活動を制限したことから、研究計画が当初の予定よりも遅くなった。また、同様に学会への参加に関してもキャンセルとなったために、予算に計上していた学会参加費について使用しなかった。以上の理由により、繰越しを行う。使用計画については当初予定していたERdj8結合因子探索の予備実験も含めて、集中して実験を行い予算を使用する。さらに、これまでの結果をまとめて学会への参加を積極的に行う計画を立てている。
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