本研究は細胞に生じた分解基質がオートファゴソームによって隔離分解するために重要と考えられる小胞体のサブドメインに局在することが明らかになったERdj8をターゲットにして、その詳細なメカニズムを明らかにすることを目的として研究を遂行した。 研究実施計画に記載したように、ERdj8とリン脂質合成酵素およびATGタンパク質の関係を明らかにすること、ERdj8の小胞体内腔機能ドメインの働きを明らかにすること、そしてERdj8の超近傍で働くタンパク質の同定を行うことを計画した。 まず、一つ目の研究計画についてだが、ERdj8とリン脂質合成酵素であるCEPT1が一部共局在することから、それらが結合しているかについて明らかにするため共沈降実験を行なった。その結果、強くはないがERdj8とCEPT1の結合が観察された。この結果をもとにERdj8が小胞体で合成されるホスファチジルコリン(PC)に対して影響を及ぼすかどうか調べるために、ERdj8を欠損した培養細胞(ERdj8KO細胞)を用いて、研究実施計画通りPCのラベリング実験を行なった。その結果、ERdj8KO細胞ではPCの合成が著しく減少していることが強く示唆された。また、その結果を踏まえ、ERdj8-GFPノックイン細胞の樹立を行なった。 最終年度に実施した研究成果および補助事業期間全体を通じて実施した研究成果は、小胞体サブドメインにおいて、ERdj8がPCの合成をCEPT1と共に制御することを強く示唆するものであった。このことは、その制御メカニズムを明らかにする上で重要な意義を持つものであるといえる。
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