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2021 年度 実施状況報告書

減数分裂期のDNA修復機構におけるMcmdc2の機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06159
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

酒井 則良  国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 准教授 (50202081)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード減数分裂 / ゼブラフィッシュ / mcmdc2
研究実績の概要

減数分裂期の染色体分配には、組換えによる二本鎖DNA切断(DSB)修復が生む相同染色体の交叉が必須であるが、その制御機構には未知の部分が多い。ゼブラフィッシュ減数分裂変異体imoの原因遺伝子として見つかったmcmdc2遺伝子は、ショウジョウバエとマウスの先行研究から減数分裂期のDSB修復に機能する新規因子であることが示唆されているが、その細胞内局在や分子機構は未知である。マウスとは異なり、ゼブラフィッシュ変異体では卵母細胞が減数分裂を超えて発達するため、他の減数分裂因子への影響を解析しやすい。本研究では、はじめに、ゼブラフィッシュimo変異体がエチルニトロソウレア(ENU)による点変異体であったため、原因遺伝子がmcmdc2であることをmcmdc2ノックアウトゼブラフィッシュとの相補性テストで確認した。その後、DSBの修復過程の異常を、ヒストンH2AXのリン酸化の状態、Dmc1リコンビナーゼやMsh5の局在を調べて、解析した。その結果、ゼブラフィッシュmcmdc2変異体は組換え中間体のプロセシングに異常を持つことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)CRISPR法によってmcmdc2変異体ゼブラフィッシュの作製し、エキソン8にフレームシフト変異を持つ個体を同定した。この変異ヘテロ接合体とimoヘテロ接合体とを交配し相補性テストを行った。その結果、imoアリルとフレームシフト変異を併せ持つ雄個体では、imo変異体と同様に精子が観察されなかった。このことから、imo変異体における配偶子形成異常は、mcmdc2遺伝子の変異によるものであることが明らかになった。
(2)減数分裂期の組換えにおけるMcmdc2の役割を明らかにするために、マーカーとなる組換え因子の免疫染色によるimo変異体精母細胞の表現型解析を進めている。減数分裂期の組換えは、DSBによって始まる。これまでに、DSBによって起こるヒストンH2AXのリン酸化を確認しており、Mcmdc2はDSB形成には必須でないことがわかった。これに対し、DSBの修復過程で生じる一本鎖DNAに結合するDmc1リコンビナーゼは、野生型に比べて非常に強い集積が多くの細胞で見られた。したがって、Mcmdc2は組換えにおける相補鎖への侵入(strand invasion)には重要でないが、その後の組換え中間体のプロセシングに重要であることが示唆された。そこで、プロセシングに関わるMsh5の抗体を新たに作製して局在解析を行ったところ、imo変異体の精母細胞では、野生型に比べて染色体上に局在するMsh5のシグナルが著しく低下していることがわかった。
(3)減数分裂期のMcmdc2の局在やそのカイネティクスは、脊椎動物において全く明らかになっていない。そこで、局在解析のために抗ゼブラフィッシュMcmdc2抗体の作製を試みた。今年度は、Mcmdc2全長のリコンビナントタンパク質を用いて、ウサギとモルモットの免疫を行なったが、Mcmdc2を認識する抗体は得ることができなかった。

今後の研究の推進方策

(2)で得られた免疫細胞化学の結果について、定量的・統計的な解析をすすめる。(3)では、Mcmdc2を断片化したリコンビナントタンパク質を用いて、ゼブラフィッシュMcmdc2抗体の作製を試みる。
さらに、Mcmdc2と協働して組換えに関わると考えられているMcm8タンパク質についても抗体を作製し、imo変異体における局在を解析する。加えて、mcm8変異体を作製し、その表現型を解析する。これらの結果から、減数分裂期の組換え、とくに組換え中間体のプロセシングにおけるMcmdc2の役割を明らかにする。また、これまで解析できていない卵母細胞における表現型を解析し、雌雄差で起こる減数分裂の違いについても迫っていきたい。

次年度使用額が生じた理由

Mcmdc2抗体が作製できず、次年度に再度試みるため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Meiotic Chromosome Dynamics in Zebrafish2021

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Imai, Ivan Olaya, Noriyoshi Sakai and Sean M. Burgess
    • 雑誌名

      Frontiers in Cell and Developmental Biology

      巻: 9 ページ: 757445

    • DOI

      10.3389/fcell.2021.757445

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2022-12-28  

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