研究課題/領域番号 |
21K06162
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
川口 禎晴 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 主任研究員 (00450833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | TSC2 / アセチル化 / 概日リズム / 時計遺伝子 / ノックインマウス |
研究実績の概要 |
我々は昨年度、TSC2アセチル化の概日リズムに伴う変動について、主に培養細胞を用いた研究から1)生理的な環境下では脱アセチル化酵素SIRT1が関与すること、2)細胞内BMAL1のタンパク質発現量へ影響を及ぼすことを明らかにした。また、TSC2変異体のノックインマウスの作出にも成功した。本年度はノックインマウスのC57B6マウスへの戻し交雑を進めるとともに、ノックインマウスからMEF細胞を作製して表現型解析の一部を行い、TSC2変異体がもたらす概日リズムへの影響を検証した。 MEF細胞はTSC2のアセチル化不全(KR)変異体をホモで持つマウスと、疑似アセチル化(KQ)変異体をホモで持つマウスそれぞれから作製した。TSC2がmTORシグナリングの調節因子であることから、p70S6Kのリン酸化を指標にそれぞれの細胞でのmTOR活性化状況を調べたところ、以前の変異体を強制発現させた293細胞で得られた結果と同様に、KRでは抑制され、KQでは活性化されていることが確認された。これらのMEF細胞における概日リズムを高FBS下でリズム同調後にBMAL1とPER1を指標として検証したところ、KR・KQいずれの細胞ともBMAL1とPER1の発現リズムが乱れていることが見いだされた。加えて、いずれの細胞とも高FBS下によるリズム同調に対して耐性を持つことも明らかとなり、これらのことから、概日リズムの同調や日内変動の維持にTSC2のアセチル化が重要な意味を持つことが示された。 C57B6マウスへの戻し交雑は5世代目が得られており、2023年度には6世代マウスによる概日リズムの先行試験を予定している。KR・KQマウスともホモの雌雄個体で生殖可能であるが、KRの6ヶ月齢マウスでは野生型と比べ明らかな体重減少が観察されている。代謝系の異常が予想されるため、先行試験では代謝系の表現型解析も予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りノックインマウスからMEF細胞を作製し、細胞を用いた表現型解析において成果が出ている。また戻し交雑も順調で、次年度には先行試験を実施するところまで進展した。
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今後の研究の推進方策 |
TSC2のアセチル化変動を担う分子の探索としてアセチル化酵素の同定を進め、SIRT1とともにアセチル化TSC2量の変動をもたらす分子メカニズムを明らかにする。 TSC2のアセチル化変動の生物学的意義を明らかにする研究については、引き続きノックインマウス由来のMEF細胞を用いた概日リズムに関する機能解析を実施し、細胞レベルへの影響を解明する。また、C57B6マウスへの戻し交雑5世代めのマウスについて、先行試験として概日リズムの行動実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金については予定通りの支出であったが、物品費については前年度に購入した物品の使用が当該年度も継続しており、購入機会が減ったことにより残額が発生した。翌年度はこの残額分も含め、物品購入や旅費、謝金等に使用する。
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