研究課題/領域番号 |
21K06164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
依光 朋宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00534364)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小胞体チューブ構造 / 膜曲率 / Sed4 / 小胞体内腔領域 / 天然変性領域 |
研究実績の概要 |
小胞体膜タンパク質Sec12ホモローグであるSed4はCOPII小胞形成因子Sec16との相互作用依存的にER Exit Site (ERES)に集積する。加えて、Sed4の小胞体内腔領域も自身のERESへの集積に必要である。昨年度までに出芽酵母細胞を用いた実験により以上の結果が得られた。本年度はこの結果をさらに発展させるためにSed4の小胞体内腔領域に注目しその機能解析を行なった。 Sed4の細胞質領域をSec12のものと交換したSed4-12C変異体は、ERESに集積しなくなるが小胞体のチューブ構造のような膜曲率の高い部位に特異的に局在した。一方、Sed4-12CからSed4由来の小胞体内腔領域(Sed4L)を欠損した変異体はチューブ構造特異的な局在は失われSec12様の小胞体全体への局在を示した。この結果から、Sed4Lには小胞体チューブ構造に局在するための機能があることが示唆された。この可能性を検証するために、Sed4LをSec12またはSec22に融合したコンストラクトの細胞内局在を調べた。Sec12とともにSec22も小胞体全体へ局在するが、Sed4Lを融合した両コンストラクトはその局在パターンを変化させチューブ構造への集積を示した。さらに、Sed4L断片自身を小胞体内腔へ移行させるとチューブ構造特異的な局在が観察された。以上の結果から、Sed4Lは小胞体チューブ構造を認識する機能を有し、その機能は膜貫通領域に依存しないことが示された。 Sed4ホモローグの中にはSed4と同様に650アミノ酸超の比較的長い小胞体内腔領域を持つものが存在する。このようなSed4ホモローグ由来の内腔領域断片でもSed4Lと同様にチューブ構造への特異的な局在が観察された。Sed4とそのホモローグ由来の小胞体内腔領域はそのアミノ酸配列の相同性は低い一方、予測ソフトによる解析から天然変性領域(IDR)であるという共通した性質を持つことが推定された。以上の発見から小胞体チューブ構造の認識機能にはIDRが関与する可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はSed4-Sec16間の機能制御の解明を目的とし、Sed4とSec16が相互作用することで両タンパク質が共同的にERESへ集積するメカニズムを見出した。得られた研究成果は論文として発表することがきた。このことから本課題は申請計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Sed4がERESに集積するメカニズムの一端を解明できた一方、そのメカニズムにSed4小胞体内腔領域が関わることが示された。この発見をさらに発展させるために行なった実験結果により、Sed4小胞体内腔領域が天然変性領域として小胞体チューブ領域を認識することが可能性が提示された。今後この可能性をさらに検証するための実験を行うことで全く新たな機能性を示すことができることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に成果をまとめた論文の掲載料金として使用する予定し実際に論文が雑誌へ掲載されたが掲載料金がかからなかった。生じた次年度使用額は、次年度に計画した実験の実施に必要な試薬や物品の購入する。加えて研究成果を学会で発表するための費用として使用する。
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