研究課題/領域番号 |
21K06165
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
澁谷 浩司 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30261324)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | WNK1 / HSN2 / HSANII / Maea. S / β-カテニン / 頭部形成 / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
我々は高血圧症PHAII原因遺伝子With no lysine kinase 1 (WNK1) の解析から生体内において、WNK→SPAK/OSR1→共輸送体というシグナル伝達経路が腎臓における血圧調整に関与することを示してきた。一方、WNK1/HSN2遺伝子は神経特異的スプライスバリアントであり、その変異により遺伝性知覚ニューロパチー(HSANII)の原因遺伝子となる。しかしながら、その発症機構は不明となっていることから、昨年度WNK1/HSN2遺伝子の神経系における機能解析を進め、HSN2変異体がHSN2および/またはWNK1経路のGSK3βを介して神経分化の調節不全を引き起こすことを明らかにし、この成果を本年度Scientific Reports誌に掲載することができた。 本年度は、アフリカツメガエル(Xenopus)のE3 ligaseであるMaea.Sによるβ-カテニン分解制御について解析を進めた。その結果、Maea.Sによるβ-カテニンのタンパク質量の減少が転写レベルではなく、翻訳後の分解によって起こること、Maea.Sは初期発生において、β-カテニンタンパク質の分解を介して過剰なWnt活性を抑制する遺伝子として機能し、主に頭部形成に関与していること、Maea.Sが初期発生において頭部形成に必須な遺伝子であること、Maea.Sによるβ-カテニンの分解が既知の4つのリジン残基以外のリジン残基のユビキチン化を介して起こっている可能性を明らかにした。このmaeaによるβ-カテニン分解機構のさらなる研究は、canonical Wntシグナル伝達の新たな抑制機構、それに関連する胚発生機構や癌の抑制機構の解明に貢献すると考えられる。 なお、本研究内容は本年度Dev. Growth Differ.誌に掲載することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WNK/HSN2シグナルにおいてGSK3βや転写因子Lhx8との関係や、HSANII患者で報告されているHSN2変異体を用いた解析から神経分化における役割を明らかにし、これらのシグナル系によるHSANII発症機構も明らかにし、本年度、論文としてまとめることができた。 また、XenopusのE3 ligaseであるMaea.Sによるβ-カテニン分解制御について解析を進め、canonical Wntシグナル伝達の新たな抑制機構、それに関連する胚発生機構を明らかにし、この研究についても、本年度、論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
WNKとWntシグナルにおけるβ-catenin分子との関係について本年度はXenopusを用いた解析が進んだが、これらシグナル伝達制御機構について、培養細胞系を中心に、より詳細な分子機構に関する研究を重点的に進め、WNK遺伝子の神経分化における役割を明らかにしていく。
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