ショウジョウバエ由来のプレキシン・セマフォリン遺伝子に関して、親和性の高い組み合わせのサブタイプについて発現・精製条件を検討した。セマフォリンに関しては安定に精製できる条件が決まり、ネガティブ染色およびクライオ電子顕微鏡により二量体の形成を確認することができたが、レセプターであるプレキシンの全長コンストラクトは発現量が少なく精製安定性も低かったため、段階的なC末欠損変異体を作製し蛍光ゲル濾過クロマトグラフィ法によって各変異体の安定性評価を行なった。その結果、PSI2 ドメイン以降の領域で発現安定性が下がることが分かったため、AlphaFold予測構造を元に、単粒子解析に適した安定な改変体の作製を進めている。 ヒトセマフォリンについてはリポソームの様な脂質環境下での観察を目指して、Virus like particle (VLP) 中への再構成法の検討を行った。ヒトセマフォリン遺伝子とHIV gag遺伝子をExpi293F細胞に共発現させ、培養上精からVLPを精製した。融合させたEGFPのシグナルから、VLP画分へのセマフォリンの局在を確認し、ネガティブ染色およびクライオ電子顕微鏡によりVLPの形状を観察する系を確立した。また、膜中でのセマフォリン分子の位置同定に適用可能な電顕用遺伝子組み込みタグを開発すべく、12量体型フェリティン分子を用いた融合遺伝子コンストラクトを作製・検討し、split GFPによる連結多量体として安定に発現できるタグ分子を設計した。これらを組み合わせて脂質膜中でのセマフォリン-プレキシン複合体のin situ構造をクライオ電子線トモグラフィーにより観察を目指している。
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