研究課題/領域番号 |
21K06172
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池上 浩司 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (20399687)
|
研究分担者 |
中里 亮太 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (30761803)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 繊毛 / ストレス / 浸透圧 / pH |
研究実績の概要 |
種々のストレスのうち,浸透圧変化と細胞外環境のpH変化の2種類のストレスが一次繊毛の形態に劇的な変化を及ぼすことを見出した。 浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の形態変化については,蛍光一次繊毛を発現する細胞を用いたタイムラプスイメージングにより,一次繊毛形態の経時的変化を捉えることに成功した。また,阻害剤を用いて一次繊毛形態変化の分子基盤の一端解明を試み,細胞骨格系の分子が一次繊毛の形態変化に寄与していることを突き止めた。この発見は本研究における究極命題に掲げている「後天性繊毛病(acquired ciliopathy)の治療や予防」に繋がりうる点で非常に重要なものとなる。 細胞外環境pH変化ストレスによる一次繊毛の形態変化については,予想外の結果を得ることができた。すなわち,細胞外環境pH変化ストレスが一次繊毛形態に対し正の効果を示すことを見出した。この発見は環境ストレスによる一次繊毛形態の多様化を示唆しており,様々な刺激や生体内環境の変化によって一次繊毛が多様な形態をとりうる可能性を提示しうるものとなる。これまでの一次繊毛研究で考えられていた一次繊毛の“姿”を一変させる可能性も秘めており,重要な成果と言える。 これられにくわえ,浸透圧変化ストレスや細胞外環境pH変化ストレスによる一次繊毛形態変化に寄与する他の分子を探索した結果,浸透圧変化ストレスや細胞外環境pH変化ストレスが一次繊毛の形成や安定性に関わる重要な分子群や細胞内構造の変化を引き起こすことを見出した。これはストレスによる一次繊毛の形態変化の分子基盤を明らかにする本研究において極めて重要な発見の一つとなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ストレスによる一次繊毛の形態変化に加え,一次繊毛の形成や安定性に関わる重要な分子群や細胞内構造の変化を見出し,ストレス依存的な一次繊毛形態変化の分子基盤に迫る手がかりを得ることができた点は当初計画以上の成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の形態変化については,令和3年度に発見した細胞骨格系の寄与と一次繊毛の形成や安定性に関わる重要な分子群や細胞内構造の変化の寄与の相互作用を検証し,それらのデータが取得され次第,論文化して公表することを目指す。その後,当初計画どおり繊毛病原因遺伝子変異との相乗効果の検証を開始する。 細胞外環境pH変化ストレスによる一次繊毛の形態変化については,蛍光一次繊毛を発現する細胞を用いたタイムラプスイメージングを実施し,一次繊毛形態の経時的変化を捉える。くわえて,令和3年度に発見した一次繊毛の形成や安定性に関わる重要な分子群や細胞内構造を異なる蛍光波長の蛍光分子で標識した細胞株を樹立し,二色タイムラプスイメージングを実施することで,一次繊毛の形態変化とそれらの分子群や細胞内構造の変化の相互関係を捉える。得られた結果をもとに一次繊毛の形成や安定性に関わる重要な分子群や細胞内構造を強制的に制御し,細胞外環境pH変化ストレスによる一次繊毛の形態変化に対するそれらの分子群や構造の寄与を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用できる運営費交付金由来の学内予算が年度途中で多くなったこともあり,本予算の使用が抑えられた。 結果的に生じた次年度使用額については,令和3年度に得られた予想外の発見を発展させるための追加実験などに使用する。
|