研究課題/領域番号 |
21K06181
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
上岡 裕治 関西医科大学, 医学部, 講師 (50511424)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞接着 / 好中球細胞死 / NETosis / インテグリン / 生体イメージング / Rap1 |
研究実績の概要 |
細胞接着シグナルとNETosisとの関連性を示唆する報告はあるものの、NETosisの詳細な分子メカニズムは未だ不明である。また、定量的なNETosisの評価が難しい現状がある。本研究課題では、当該年度において細胞接着を制御するRap1シグナル分子の好中球特異的ノックアウトマウスの作出を進め、一部に関してはダブルノックアウトマウスまで完了した。現時点ではいずれのノックアウトマウスも野生型と同様の成長を示しているが、一部に関しては骨形成異常などが予想されるため引き続き観察を続けている。各種ノックアウトマウス由来の好中球を精製する方法が確立していなかったが、文献等を参考にパーコールを用いた従来の方法よりも精製純度の高い精製方法を確立した。 NETosisの誘導には病原体由来因子であるLPS、Zymosanを検証したが、Zymosanに関してはインテグリン非依存的な細胞接着が認められ、またNETosis検出用試薬 SytoxGreen等によってZymosanが染色されてしまったため、予定していたin vitro実験が進まなかった。LPS投与による肺での好中球浸潤を組織化学的染色および気管支肺胞内洗浄によって評価し、興味深い結果が得られた。 二光子励起顕微鏡の装置トラブルが続いたが、代わりで行った二光子顕微鏡を用いない顕微鏡観察法によって、現有の二光子顕微鏡よりも高速で観察が可能であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でマウス飼育頭数の制限などがあったが、細胞接着を制御するRap1シグナル分子の好中球特異的ノックアウトマウスの作出は予定よりも進んだ。いずれのノックアウトマウスも野生型と同様の成長を示しているが、一部に関しては骨形成異常が予想されるため引き続き観察を続けている。特に、科研費の前倒し制度を利用して好中球特異的Mst1ノックアウトマウス作出を予定よりも進めることができた。LPS投与による肺での好中球浸潤を組織化学的染色および気管支肺胞内洗浄で評価する実験系では、ある程度まとまったマウス数が必要だったが、マウス飼育頭数制限と重なり必要なマウス数を用意できなかったため、次年度に再度実施する予定である(再現性の確認)。NETosisの定量評価に関しては、Zymosanのインテグリン非特異的結合とSytoxGreen染色性が問題となったため、別の評価方法を新しく検証する必要がある。2年目以降で画像ビックデータを用いた機械学習を導入し、MATLABソフトウエアでNETosis形態評価プログラムを進めていきたいが、必要な画像取得条件を決めることが予定より遅くなる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の計画通りで進める予定であるが、前述の再現性の確認やNETosisの定量評価に必要な実験系の構築を2年目の早い段階で進める予定である。予定より進んでる好中球特異的Mst1ノックアウトマウスの作出が完了すれば、エネルギー代謝、ROS産生能(ミトコンドリア機能、動態)をMst1欠損好中球と野生型で比較し、Mst1依存的なNETosis制御メカニズムを明らかにする予定である。 また、大学内他講座との共同研究の可能性も出てきたため、ある程度打ち合わせを行い、本研究課題を進める方向であれば積極的に共同研究を進めようと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス飼育費や消耗品費用のため、当該年度後半で研究費が不足することが予想されたため、前倒し支払い請求を行った。(直接経費50万円 間接経費15万円) 最終的には、年度末までに支払い請求で受け取った追加の直接経費を使わずに年度を終えたので次年度使用額が生じた。
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