研究課題/領域番号 |
21K06195
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
横山 仁 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90455816)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 四肢再生 / 両生類 |
研究実績の概要 |
本研究は幼生では完全な四肢を再生するが、成体では1本の棒状軟骨しか再生しないツメガエルを対象にして、パターン形成と細胞分化の両面から成体の四肢再生を回復させ、再生能力の差の原因を実証することを目的としている。パターン形成遺伝子(shh)をより強く発現させるほどパターンの回復が見られることがこれまでの研究で示唆されていたことから、遺伝学的な交配と移植実験によってより強力に同遺伝子の発現誘導が行える個体の作製を行った。また再生芽に限局して遺伝子を発現させる方法として、温めたアガロースゲルで局所的な熱ショックを与える発現誘導法を導入し、実際に再生芽で広範囲に発現誘導できることを示した。さらにshhの発現を制御する遠位エンハンサーの活性を可視化してshhおよび関連する遺伝子の発現との対応関係を解析し。エンハンサーが成体の四肢再生では不活性化していることを観察した。 細胞分化については四肢再生過程における軟骨分化の進行をツメガエルの幼生と成体およびイベリアトゲイモリ(成体)との間で比較した。ツメガエルの成体の四肢再生では円錐形の再生芽が形成される時期には実際に軟骨分化が亢進することを示した。それと並行して軟骨分化を開始させる遺伝子(sox9)の機能を阻害するドミネガ型遺伝子を作製して、機能阻害の効果を共同研究者の協力のもとで観察した。その上で熱ショック依存的にドミネガ型遺伝子を発現するコンストラクトを準備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
shhを強力に発現誘導できるツメガエルの系統の樹立が予想以上に難しく、胚期にしばしば発生異常を生じることから、生存可能でかつ強力に発現誘導できる個体を得るために様々な試行錯誤を要した。一方で再生芽での発現誘導の方法の導入、shhのエンハンサーの活性化パターンの解析、ツメガエル成体における軟骨分化の亢進の実証については予定通りに行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ツメガエルの成体の再生芽においてshhを強力にかつ局所的に発現させることで、実際にパターン形成を回復させる実験を行う。またshhのエンハンサーの活性化パターンの解析結果に基づき、エピジェネティックな転写抑制の解除など、直接の発現誘導とは別の角度からパターン形成遺伝子の発現を成体のツメガエルで回復させる方法を模索する。細胞分化については熱ショック依存的にドミネガ型sox9を発現するコンストラクトを遺伝子導入したツメガエルの系統を樹立して、過剰な軟骨分化の抑制実験を行えるようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会が現地開催できずにオンライン開催になるなど、当初予定していた旅費の使用が無かったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額分については翌年度分として請求した助成金と合わせて、旅費および論文発表に伴う英文校閲費としての使用を予定している。
|