研究実績の概要 |
本研究は幼生では完全な四肢を再生するが、成体では1本の棒状軟骨しか再生しないツメガエルを対象にして、パターン形成と細胞分化の両面から成体の四肢再生を回復させ、再生能力の差の原因を実証することを目的としている。パターン形成遺伝子(shh)を強力に発現する遺伝子組換え(Tg)ツメガエルの系統では生存率が下がることから、前年度までは個体を得ることが困難であったが、飼育方法の改良などにより現在は個体が得られるようになった。さらに四肢再生における遺伝子の機能解析を実現する方法として、温めたアガロースゲルで付属肢特異的な遺伝子発現を誘導する方法を開発して、アフリカツメガエルとイベリアトゲイモリで利用できるようにした(Matsubara, Kawasumi-Kita, Nara et al., Dev Growth Differ, 2023)。さらにshh遺伝子の四肢特異的なエンハンサーを可視化したTgツメガエルを用いて、エンハンサーが成体の四肢で不活性化することに関連して、同エンハンサーのDNAのメチル化率がTgツメガエルにおいても幼生と比べて成体で高くなることを示した(Tada, Higashidate et al., bioRxiv, 2022)。 細胞分化については、軟骨分化のカギとなるSox9タンパク質の局在を蛍光免疫染色で可視化し、ツメガエルの幼生と成体のそれぞれの四肢再生で比較した。その際に再生芽内におけるSox9陽性細胞の分布の偏りを比較する方法を、共同研究者のサポートを得て考案した。
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