研究課題/領域番号 |
21K06200
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 純平 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (80726521)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コラーゲン / 細胞外マトリックス / 骨 / ゼブラフィッシュ / リモデリング / 鰭 |
研究実績の概要 |
本申請研究は魚類のヒレ骨形成に必須なコラーゲン結晶体であるアクチノトリキアの「輸送」の仕組みを明らかにすることを目的としており、大きく2つの課題に取り組む計画をたてた。 まず一つ目の研究課題である、「成長末端部へのアクチノトリキア輸送システムのメカニズム」を明らかにするために、ヒレ先端部での基底上皮細胞、及び間葉系細胞の細胞分裂を生きた個体で可視化するイメージングツールを確立した。このイメージングを行うために、細胞周期特異的に核内に集積する因子を蛍光タンパクを付加させた形で上記の2種の細胞特異的に発現させるトランスジェニックゼブラフィッシュ系統を作製した。これらの系統を用いたイメージングによって、ヒレ骨成長過程での先端部へのアクチノトリキアの移動は、間葉系細胞の方向性を持った分裂によって引き起こされることが示唆された。この実験結果を中心とした内容で現在一報目の論文を作製中である。 また2つ目の課題である、「骨直下における分解過程でのアクチノトリキアの運搬メカニズム」を明らかにするために、本年度は関与する細胞の特定を試みた。マクロファージ・好中球・破骨細胞の3つの細胞に着目して可視化系統を作製し、ライブイメージングを用いた方法でアクチノトリキアの分解過程を調べた結果、破骨細胞がこの分解過程に中心的な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、分解過程でのアクチノトリキアの移動の方向は破骨細胞の運動方向と一致しており、骨直下での方向性のあるアクチノトリキアの運搬は破骨細胞によって行われることも突きとめた。 以上本年度の研究で明らかにした結果を、第92回日本動物学会大会、第44回日本分子生物学会年会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の目標は、大きな細胞外マトリックスの構造体であるアクチノトリキアが組織の成長とともに移動する(輸送される)ダイナミクスを明らかにし、関与する細胞を特定しこれらの細胞とアクチノトリキアの相互作用をin vitroで再現することである。 本年度にすでにin vivoで生きたままアクチノトリキアの動態をライブイメージングで捉えることに成功しており、1つ目の目標はおおよそ達成できたと言える。 さらに、関与する細胞群の特定にも本年度の研究で成功しており、これらの細胞群とアクチノトリキアの相互作用のダイナミクスをin vitroで解析する準備も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者はこれまでの研究により、ゼブラフィッシュのヒレから各種細胞を単離してin vitroで培養する手法を確立している。 この方法では、各種細胞とアクチノトリキアの相互作用を2次元的な培養環境でライブイメージングを行うことができるが、本申請研究の達成には、マトリゲルなどを用いて各種細胞を3次元的な環境で培養する必要がある。 今後の方向性として、異なる濃度(粘性)のマトリゲル、あるいはコラーゲンゲルを用いた3次元培養を行うことで、アクチノトリキアが細胞によって「押し出される」「分解される」過程を再現し、高解像のイメージングでこれらのアクチノトリキアの動態を詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会参加のための旅費を割り当てていたが、参加学会がすべてオンライン開催となったため、旅費を減額した。 骨直下における分解過程のアクチノトリキアの3D画像解析を行うため、理化学研究所岩根グループと共同で連続電顕観察を数回に分けて行う計画をしていたが、出張回数が減ったため、出張費に差額が生じている。 また研究代表者の所属機関が2021年度途中で変更となったこともあり機器類の購入計画が難しく、物品費を減額した。
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