研究課題/領域番号 |
21K06200
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 純平 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 助教 (80726521)
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研究分担者 |
岩根 敦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (30252638)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コラーゲン / リモデリング / 骨 / ゼブラフィッシュ / 4Dライブイメージング |
研究実績の概要 |
これまでに研究代表者は、ゼブラフィッシュのヒレ骨形成において中心的な役割を果たすコラーゲン結晶体 「アクチノトリキア」をライブで蛍光標識する手法を開発・確立してきた。任意のステージにおいてアクチノトリキアを蛍光標識した個体を経時観察した結果、アクチノトリキアが成長末端部に向かって移動する、すなわち一定の方向に運搬されることを見出している。さらに、十分に大きく成長したアクチノトリキアはヒレ骨の成長の間あるタイミングで移動を停止し、破骨細胞により分解されることも見出している。 本年度は、さらに異なる蛍光色でアクチノトリキアを標識できる系を組み合わせることで、アクチノトリキアの成長パターンについて調べた。その結果、アクチノトリキアは成長末端部に移動する際にその周囲に新しく分泌されたコラーゲンが付加していくことで徐々にサイズを増していくが、予想外に非対称な付加成長のパターンを示した。すなわち、遠位・近位方向に対称に成長するのではなく、主に近位方向に向かって伸長していくという非対称な成長をすることが明らかになった。一方、放射状に配向しながら成長すると必ずそれぞれのアクチノトリキアの間の距離が増していくことになるが、興味深いことに古いアクチノトリキア同士の間には新しく形成されたアクチノトリキアが挿入されることで常にアクチノトリキアの間隔を一定に保つ機構があることを明らかにした。また、並行してすすめていたex vivo培養によるイメージングを改善し、より高解像で細胞とアクチノトリキアの相互作用の動態を捉えることが可能になった。この結果、破骨細胞が古くなったアクチノトリキアにアクチンリッチな仮足で巻きつき、伸長しながら溶かす(分解する)様子を捉えることに成功し、これまでに不明であったアクチノトリキア分解過程の詳細な機構が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はin vitroの実験系を改良しマトリゲルを使った3D培養の系を確立させることを当初計画していた。この新しい培養系を利用してアクチノトリキアをin vitroで動かす過程を再現することを目標にしていたが、細胞とアクチノトリキアを同時にゲル内に配置させることが現段階で技術的に難しく、この実験は現在も最適な系の確立の試みを続けている。代わりに、ex vivoの培養系を改善させることで、より高解像のin vivoライブイメージングが可能になり、この結果アクチノトリキアの分解過程を詳細に捉えることに成功している。さらに、本年度は2つの異なるコラーゲン繊維を可視化する蛍光プローブを使ったpulse chace観察の系により、アクチノトリキアが予想外の興味深い成長パターンをとることを見出した。研究開始時には想定していなかったこれらの新規の発見もあり、本研究は一年間でさらに進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
3D培養の実験系を用いることで、アクチノトリキアを動かす過程をin vitroの系で再現したい。さらにin vivoで細胞特異的にアクチノトリキアとの接着・アクチノトリキアを動かす物理作用を人為的に操作する実験を計画している。運搬工程に関わる間葉系細胞と、解体(分解)工程に関わる破骨細胞特異的に遺伝子操作を行うためのトランスジェニック系統を次年度の早い段階で作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会を含む出張の旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染のリスクを懸念し国際学会の参加は本年度は見送った。また本年度計画していた培養実験のための消耗品類の購入額を減額しており、このため次年度使用額が生じている。
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