研究課題/領域番号 |
21K06201
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
熱田 勇士 九州大学, 理学研究院, 助教 (80874685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 四肢前駆細胞 / AER / リプログラミング / 四肢再生 |
研究実績の概要 |
初年度は、(1)ヒト四肢前駆細胞リプログラミングの礎となるヒト四肢前駆細胞培養系の最適化、(2)四肢前駆細胞とAER細胞を半永久的にラベルする手法の開発を行なった。 (1)以前の研究結果から、マウス四肢前駆細胞の培養法を確立したが、前駆細胞性を2週間程度しか維持できない手法であった。ヒト細胞リプログラミングとリプログラム細胞の長期維持に必須となる培養法の確立を目指す一環として、ヒト側板中胚葉様細胞を用いて四肢前駆細胞様細胞の誘導と誘導された細胞の長期培養法の条件検討を行なった。現在までに主にWnt、Fgf、レチノイン酸を含有する培地により、四肢前駆細胞様細胞を側板中胚葉細胞から生み出すことに成功している。また、さらにBMP/TGFb阻害剤を加えることで誘導された細胞を効率よく培養することも可能となっている。 (2)申請時にはPrx1promoter-GFPにより四肢前駆細胞を、Msx2promoter-DsRedによりAERを特異的にラベルすることが可能となっていたが、この時点では各レポーター遺伝子は一過的に発現させることしかできなかった。TGニワトリ作製に向けては、ゲノム内にこれらレポーターエレメントを挿入する必要があるため、Tol2トランスポゾンシステムを採用し、レポーターがゲノム内に挿入されうるコンストラクトを作製した(pTol2-Prx1-ZsGreen, pTol2-Msx2-DsRed2)。ニワトリ胚での検証の結果、期待どおりレポーター遺伝子がトリゲノムに挿入されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロジェクトの核心であるヒトiLPC、iAERの作製について、直接的に未だアドレスできていないため、「やや遅れている」と判断した。しかしながら、[研究実績の概要]の項で示した成果については、いずれも、次年度以降の研究をより円滑に進めることに寄与すると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、(1)最適化した培養法を用いてヒトiLPCの作製、(2)AER培養法の最適化の2点に重点的に取り組む。 (1)まずは既に先行研究にて同定したマウス細胞リプログラミング因子群を使って、ヒト線維芽細胞が四肢前駆細胞様細胞へとリプログラムするか調べる。その際、2021年度に見出した培地を用いる。免疫染色により四肢マーカー遺伝子の発現が認められれば、さらにRNA-Seqを行い遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する。もし、コントロールとして用いる内在性の四肢前駆細胞(マウス)と比較し、欠落している四肢発生関連遺伝子(特に転写因子に注目する)が見つかれば、さらにそれらを加え、再度リプログラミングを行う。 (2)2021年度に作製したpTol2-Msx2-DsRed2をニワトリ肢芽表皮に導入したのち、DsRedでラベルされたAERを単離する。その後、DsRedのシグナルをAER細胞の指標として、培地成分の最適化を行う。四肢発生過程ではFgf10がAERの特定化・維持に、ShhがAERの維持に必要であることが知られているため、それらの知見を踏まえて条件検討を行う。 2023年度は、リプログラム四肢前駆細胞の機能検証および3次元オルガノイド化、また、iAERのリプログラミングに取り掛かりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中に使用を予定していた細胞培養関連試薬が、バックオーダー・製品流通などの問題により当該年度内に納入されなかったため。
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