モデル動物におけるゲノム編集技術を用いたノックアウトやノックインによる遺伝子機能の解明が進展しているが、タグの挿入のようなゲノム編集ラインの確立は時間を要するステップである。したがって、一つのペプチドタグを高機能化・多機能化できれば、実験目的ごとのノックインやノックアウトの必要性を低下させ、研究の迅速化につながることが期待される。本研究は、発光タグとして開発されたHiBiTの高機能化・多機能化を通して遺伝子機能の解析の高度化・迅速化をもたらす方法を開発し、これをゼブラフィッシュ胚発生過程における転写因子の研究へと応用することを目的として実施する。 HiBiTタグは、NanoLucの2断片(HiBiTとLgBiT)の相補に基づく発光検出が可能なタグとして開発された11アミノ酸からなるペプチドタグであるが、両者は高い親和性で相互作用し得るため、アフィニティタグとしても利用できる可能性がある。一方、細胞内におけるタンパク質検出にナノボディが利用される場合が近年増加している。そこで、親和性が高いことが知られるALFAタグ-ナノボディ(NbALFA)の組み合わせとHiBiTタグとLgBiTの組み合わせの比較を行うことで、HiBiTとLgBiTの相互作用を利用するシステムの有効性を調べた。ALFAタグ-NbALFAの相互作用を利用したプロテインノックダウンが報告されていることから、HiBiTタグあるいはALFAタグを付加した緑色蛍光タンパク質GFP、F-boxを融合したLgBiTおよびF-boxを融合したNbALFAを用意した。それぞれの組合せをゼブラフィッシュ胚で発現させ、相互作用を通してGFPのタンパク質分解が生じるかを調べた。その結果、いずれの場合も両者の相互作用に依存したGFPの蛍光消失がほぼ同様に観察できたことから、HiBiTとLgBiTの相互作用はALFAタグ-NbALFと同様に利用できることが示唆された。この結果は、HiBiTタグが幅広いin vivo実験で利用可能なことを示唆する。
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