現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
心臓特異的に遺伝子組換え酵素Creを発現するマウスとCre依存的にPitx2とEGFPを発現するマウスとを交配して、心臓全体にPitx2およびEGFPを発現するマウス(Pitx2異所性発現マウス)を作出した。Creマウスをコントロールとして、10.5日胚心臓を用いてシングルセルRNA-seq解析を行い、マーカー遺伝子の発現をもとに、心筋、内皮、心臓前駆細胞等の細胞種に分け、それぞれの細胞種において発現が変化している遺伝子を探索した。その結果、Pitx2異所性発現胚のEGFP陽性の特殊心筋では洞房結節マーカー遺伝子群(Hcn4, Tbx18, Shox2, Smoc2)の発現が著しく減少していることを見出した。さらに、EGFP陽性の心筋ではサルコメア因子(Tnnt2, Actc1, Myl7など)の発現が著しく亢進しており、Pitx2が心筋分化を制御している可能性が見出された。心房中隔形成では、後方二次心臓領域の心筋分化のタイミングが重要であることから、Pitx2異所性発現胚では後方二次心臓領域での心臓前駆細胞の未分化性が失われることで心房中隔形成が抑制されている可能性が考えられた。加えて、Pitx2異所性発現胚のEGFP陽性の心筋ではWntシグナル阻害因子であるSfrp1, Dkk3の発現が亢進していた。このことから、心筋でのWntシグナルの阻害がPitx2異所性発現心臓で認められる細胞外基質の過剰な蓄積に影響している可能性が考えられた。 このように、心筋細胞を中心に発現変動している複数の遺伝子が同定されており、その機能からPitx2の異所性発現による形態変化との関連が予想され、計画は順調に進捗していると言える。
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