研究課題
令和3年度の研究では、(1)エピブラスト細胞の頭部から尾側への移動の制御へのOTX2の関与、(2)OTX2の下流遺伝子、(3)OTX2と発現・機能の上で逆相関が予測されるWntシグナルとの関わりーーこれら3つの研究テーマのうち(1)、(3)を中心に研究を進めた。研究(1)の基盤は「ニワトリ胚のエピブラストを離散的に標識してそれらの移動を長時間(~18時間)にわたって追跡した結果、前部両側から中心線に向かっての集合(脳を作る)と、集合した細胞の一部が後方に移動する(脊髄を作る)という大きな細胞移動がある」ことを明らかにしたことである。この研究を完成してその成果を論文発表するために、ニワトリ胚エピブラストの細胞移動を領域・時間帯に分割してデジタル化して評価する方法を開発した。この方法は、OTX2の活性の操作による細胞移動の変化の分析にも用いる。いくつかの追加研究を加えた論文は、2022年3月に刊行された(Yoshihi et al. Development 2022 149(6):dev199999.)研究(3)に関しては、マウスのエピブラスト幹細胞から神経系の領域成立直後の発生ステージに対応する神経幹細胞株を樹立する際に、その樹立過程で様々な強度のWntシグナルを与えることの効果を分析した。Wntシグナルを低下させた条件ではOtx2を発現する前脳・中脳に対応する神経幹細胞株が樹立されるのに対して、強いWntシグナルを付加した場合には、頸部から体幹部にかけての脊髄に対応する神経幹細胞が樹立された。
3: やや遅れている
本研究の基盤として、「ニワトリ胚のエピブラストを離散的に標識してそれらの移動を長時間(~18時間)にわたって追跡した結果、前部両側から中心線に向かっての集合(脳を作る)と、集合した細胞の一部が後方に移動する(脊髄を作る)という大きな細胞移動がある」ことが明らかになったことを論文発表する必要があった。2021年9月での刊行を目指していたが、刊行が予定よりも6ヶ月遅れた。その間に行った追加研究の実績は、研究(1)の推進に大きく貢献するものであり前進ではあったが、一方で、この追加研究を実施した結果、令和3年度中に研究(2)を進めるための時間を確保できなかった。
令和3年度は、本研究の基盤となる論文の刊行のための追加解析と、マウスのエピブラスト幹細胞株・神経幹細胞株を用いたトランストーム解析に力を入れた。後者の研究の実施のために令和3年度では研究経費の一部の前倒しも行った。令和4年度では、ニワトリ胚を用いた研究を展開するとともに、マウスのエピブラスト幹細胞株の操作を中心とした研究(2)を進める方針である。
令和3年度の研究は、前倒し分を含めた使用予定金額1,400,000円に対して、32,732円を残して終了した。この残額は、令和4年度に、主に物品費として使用する予定である。
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Development
巻: 149 ページ: dev199999
10.1242/dev.199999.
https://www.brh.co.jp/research/hisato_kondo/