研究課題/領域番号 |
21K06208
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 真幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80546292)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 翻訳 / 転写 / mRNA分解 / small RNA / uORF / リボソーム / 5'非翻訳領域 |
研究実績の概要 |
本研究ではホウ素濃度に応答した、シロイヌナズナのホウ素輸送体、NIP5:1の翻訳制御を介したmRNA分解による転写制御のフィードバック機構を明らかにすることを目的とし、翻訳、mRNA分解、転写の3つの解析を行い、その全体像を明らかにすることにした。1)NIP5;1のmRNA分解を介した転写制御機構の解析:NIP5;1のmRNA分解産物からsRNAが形成され、それがNIP5;1の転写を負に制御しているかをsRNA生成に関わる遺伝子、RDR及びsRNAと結合し、転写を制御する因子、AGO1の変異株を用いて、pre-mRNA解析から、NIP5;1の転写を調べた。結果、野生型では高ホウ素条件によるNIP5;1の転写抑制が見られたが、変異株では高ホウ素条件による転写抑制が見られなかった。このことから、mRNA分解産物から生成されたsRNAがAGO1と結合し、NIP5;1の転写を抑制している可能性が強く示唆された。 2)AUG-UAA上でのリボソーム停滞により誘導される未知エンドヌクレアーゼの解析:これまで、逆遺伝学的解析から、NIP5;1のホウ素依存的な発現制御に関わる遺伝子の特定を行ってきた結果、mRNA分解に関わる遺伝子がみつかった。この遺伝子はRNAの分解酵素ドメインを保存しており、この変異株では高ホウ素条件下でのNIP5;1mRNA蓄積の抑制が弱まる。この遺伝子は細胞質に局在していた。この分解ドメインに変異を導入した株では、NIP5;1のmRNAの蓄積のホウ素応答性が野生型に比べて弱まり、分解ドメインはRNA分解活性を持っていた。このことからNIP5;1のmRNA分解に関わる遺伝子であると推察される。3)NIP5;1のホウ素依存的な翻訳制御に関わる因子の同定:逆遺伝学的解析から、翻訳に関わる遺伝子がみつかった。相補実験を行い、この遺伝子が原因遺伝子であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りにすすんでおり、2年目以降の計画の方がより困難を極めるため、そちら時間を避ける用に前倒しで行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)NIP5;1のmRNA分解を介した転写制御機構の解析:public databaseによるAGO1-associated sRNA-seq dataの解析から、NIP5;1のmRNA切断位置(AUGUAAより12bp上流)から転写開始点(6435)の領域でsense/antisense sRNAの断片が蓄積していることが確認されているが、実際、ホウ素に応答してsRNAの蓄積量が変化するかは明らかになっていない。また、ホウ素濃度に依存したmRNA分解産物由来のsRNAが存在するのか、網羅的な解析をおこなっていない。そこで、高/低ホウ素濃度条件下での、AGO1-associated sRNA-seq 解析を行うことにする。 2)AUG-UAA上でのリボソーム停滞により誘導される未知エンドヌクレアーゼの解析:2年目に予定していたmRNA分解産物を検出するdegradome解析は先行して進めており、その解析を行うと共に、エンドヌクレアーゼが停滞しているリボソームと相互作用しているかを確認するためにpolysomr profilingを 行い、Western blot解析によりエンドヌクレアーゼを検出する。 3)NIP5;1のホウ素依存的な翻訳制御に関わる因子の同定:翻訳制御に関わる因子がAUGUAA上で停滞しているリボソームの翻訳に影響しているのかを確認するため、無細胞タンパク質合成システムを用いて、精製した翻訳に関わる因子を導入し、NIP5;1のホウ素依存的な活性に変化がみられるかどうかを調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に、sRNA-seqを行う予定であったが、sRNA-seq解析よりもAGOと結合したsRNAを検出するAGO-associated sRNA-seqを行う方が、より本研究の結果に反映できるため、計画を変更しAGO-associated sRNA-seqを行うこととした。そのため、令和3年度はAGOと結合したsRNAを精製する系を確立することに時間を費やしたため、未使用額が生じた。 次年度では、AGO-associated sRNA-seqを行う予定である。
|