本研究ではホウ素輸送体、NIP5;1のホウ素濃度依存的な翻訳抑制を介した転写制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 最終年度に実施した研究の成果:核run onアッセイ法を用いてNIP5;1遺伝子の転写量を測定し、ホウ素濃度依存的にNIP5;1の転写量が抑えられているかどうかを確認した。結果、定量的に測定ができるレベルには至らなかった。植物から核を抽出する効率や、新生RNAをラベルし、精製する方法の効率が悪いため、現段階で、改良を行っているところである。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果:転写制御の引き金となる、NIP5;1のmRNAを切断する因子、CID7を発見した。このCID7は、PolyA-結合たんぱく質と複合体を形成し、翻訳過程において、NIP5;1の5'非翻訳領域に存在するAUG-UAA配列上で停滞したリボソームと結合し、その停滞したリボソーム近傍のmRNAを切断するのに働いていると推察された。さらに、CID7の変異株を用いた網羅的なmRNA分解解析では、CID7のmRNA切断のターゲットとなる遺伝子は、NIP5;1のみであることがわかった。 NIP5;1のホウ素濃度依存的な発現制御に関わる因子として取られてきた変異株の原因遺伝子がeIF5A-2であることが示唆された。このeIF5A-2は、NIP5;1のmRNA分解を制御する因子ではなく、翻訳制御に関わる因子であると推察された。eIF5Aは、停滞したリボソームの再翻訳に関わる因子として、動物や酵母などで知られている。現在、eIF5A-2変異株を用いて、リボソームプロファイリング解析を行っている。これにより、NIP5;1を含めた、eIF5A-2を介した翻訳制御が起こる遺伝子を網羅的に解析している。
|