研究課題
モデル植物シロイヌナズナの概日時計において中心的な役割を持つMYB様転写因子であるCCA1について、低温ストレスに応答したタンパク質分解の制御メカニズムを明らかにするため、温度低下におけるCCA1タンパク質の分解様式の詳細な解析と、CCA1に相互作用するタンパク質から分解制御に関わる因子の探索を行った。まず、野生型植物体とCCA1-GFP過剰発現植物体に対して複数段階での温度低下処理(22℃から4℃まで3℃ずつ減少)を行い、野生型植物体におけるDREB1A遺伝子の発現量とCCA1-GFP過剰発現植物体におけるCCA1タンパク質の蓄積量を解析した。DREB1A遺伝子の発現は、無処理時にはCCA1によって抑えられており、低温ストレスに応答して急速に誘導される。その結果、DREB1A遺伝子の発現が誘導され始める温度とCCA1タンパク質が分解され始める温度とでは若干の違いが見られた。したがって、DREB1の発現誘導には、CCA1タンパク質の分解だけでなく、複数の制御が関わっていることが示唆された。次に、CCA1-GFP過剰発現植物体を用いた共免疫沈降によるCCA1の共精製産物の探索を行った。22℃の無処理条件と4℃の低温ストレス条件のそれぞれで解析を行い、CCA1相互作用因子の候補を複数得た。その中には、2種類のE3ユビキチンリガーゼファミリーや複数のリン酸化酵素、脱リン酸化酵素が見られた。
2: おおむね順調に進展している
CCA1タンパク質の分解様式の解析を行い、CCA1タンパク質の分解が始まる温度帯を明らかにした。また、CCA1に相互作用するタンパク質の探索を行い、複数のCCA1分解制御因子の候補を得ることができた。研究は、当初の計画通り順調に進んでいる。
CCA1タンパク質の分解制御におけるリン酸化修飾の役割について解析する。温度低下処理を行ったCCA1-GFP過剰発現植物体を用いてphos-tagを加えたイムノブロット解析を行い、CCA1のリン酸化状態を解析する。特に、温度低下の度合いによるリン酸化状態の変化を解析する。また、温度低下によって分解されないことが知られているCCA1Δ-GFPの過剰発現植物体を用いて同様の解析を行う。CCA1相互作用因子候補として得られた者のうち、E3ユビキチンリガーゼやリン酸化酵素に着目して解析を行う。酵母two-hybrid法やタバコの一過的発現系を用いたsplit-luciferase法によってCCA1との相互作用の確認を行う。また、候補因子の発現部位や細胞内局在を解析するために、各因子のプロモーターやCDSを繋いだGUSやGFPレポーターを発現させる形質転換シロイヌナズナを作出する。また、候補因子を過剰発現・機能欠損させる植物を作出する。
転写因子タンパク質の免疫沈降と質量分析実験について2021年度では2回を計画していたが、1回のみしか実施できなかった。2022年度に2回目の実験を行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Trends in Plant Science
巻: - ページ: -
10.1016/j.tplants.2022.01.008