研究課題/領域番号 |
21K06209
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
城所 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70588368)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 植物 / 温度ストレス応答 / 低温 / 概日時計 |
研究実績の概要 |
モデル植物シロイヌナズナの概日時計において中心的な役割を持つMYB様転写因子であるCCA1について、低温ストレスに応答したタンパク質分解の制御メカニズムを明らかにするため、前年度に行ったCCA1相互作用因子の探索により同定された2つのE3ユビキチンリガーゼ(以下、CCA1-interacting E3 ubiquitin ligase = CUL1、CUL2と表記する)の機能解析を進めた。 まず、酵母ツーハイブリッド法を用いてCUL1、CUL2とCCA1との相互作用の確認を行った。その結果、CUL1の全長およびC末端側断片、CUL2のC末端側断片についてCCA1全長との間に相互作用が確認された。次にCUL1とCUL2の組織特異性を調べるために、プロモーター-GUSを発現する形質転換シロイヌナズナを作出し解析した結果、CUL1は主に地上部の維管束組織、CUL2は地上部全体において強い染色が見られた。またCUL1とCUL2の細胞内局在を調べるために、GFPとの融合タンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナを作出し解析した結果、CUL1は核の辺縁部、CUL2は核内において蛍光が見られた。CUL2については核内で強い蛍光を発する箇所が顆粒状に見られた。植物体におけるCUL1およびCUL2の機能を解析するため、各遺伝子のT-DNA挿入変異体cul1およびcul2を単離した。これらの植物を12時間ごとの明暗周期で生育させた結果、cul2変異体では野生型植物体に比べて胚軸が伸長した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度より東京工業大学・生命理工学院へと異動し、研究設備の大幅な変更があった。そのため、植物の生育を含めた実験環境の整備に時間を要した。またCCA1を過剰発現させると、シロイヌナズナの花成が極めて遅くなるため、形質転換植物の作出にも時間を要した
|
今後の研究の推進方策 |
CCA1タンパク質の分解制御におけるリン酸化修飾の役割について解析する。温度低下処理を行ったエピトープタグを付与したCCA1の過剰発現植物体を用いてphos-tagを加えたイムノブロット解析を行い、CCA1のリン酸化状態を解析する。特に、温度低下の度合いによるリン酸化状態の変化を解析する。また、CCA1内のPEST様配列を欠失させたことで温度低下によって分解されないCCA1Δの過剰発現植物体を用いて同様の解析を行うことで、PEST様配列のリン酸化状態と分解制御との関係を解析する。CCA1相互作用因子候補として得られたCUL1とCUL2について、CCA1と共発現する形質転換シロイヌナズナを用いて共免疫沈降を行うことで、植物体内でのCCA1とCUL1、CUL2との相互作用とその温度応答性を確認する。またCUL1およびCUL2の過剰発現体または変異体を用いてCCA1タンパク質の温度低下に応答した安定性の変化を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度より東京工業大学・生命理工学院へと異動し、研究設備の大幅な変更があった。そのため、植物の生育を含めた実験環境の整備に時間を要したことから、計画していたリン酸化検出実験を行うことができなかった。リン酸化検出実験は本年度に行う。
|