研究課題/領域番号 |
21K06210
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中村 瑛海 (伊藤瑛海) お茶の水女子大学, ヒューマンライフサイエンス研究所, 特任助教 (80726422)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膜交通 / RAB GTPase / Effector |
研究実績の概要 |
細胞内のタンパク質や膜脂質の配置は、膜交通という膜でできた中間体を介した物質輸送の仕組みにより決定される。研究代表者は、植物が独自の膜交通因子をもつことや、植物独自の膜交通制御因子が、真核生物に共通の仕組みに作用することにより独自の液胞輸送制御機構を構築していることを明らかにした。また、この植物にユニークな液胞輸送経路が塩ストレス応答などの環境ストレス応答において何かしらの役割を担うが、この輸送ルートが何を輸送に、どのようなメカニズムで結果的に植物個体の塩ストレス応答に繋がるのかは明らかでない。そこで、本研究では、シロイヌナズナの塩ストレス時に植物にユニークな液胞輸送経路が輸送する積荷タンパク質、ならびに、この輸送を駆動する分子群を単離することで植物の環境応答に対する膜交通の役割の総合的理解を深めることを目的とした。 これまでに実施した研究から、細胞内の特定のオルガネラに局在するナトリウムトランスポーターのひとつがオルガネラと液胞膜をサイクルし、このことがシロイヌナズナの塩ストレス応答に関与することがわかった。引き続き、この仕組みに関連する因子と積荷の単離を目指し、研究を遂行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、塩ストレス応答に関与する分子で液胞へと運ばれる具体的な積荷をひとつ同定することに成功した。今後は、液胞輸送を制御する分子の変異体を用いて、これらの変異体のなかで、この分子がどのような動態を示すかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて調査することで、この分子が液胞に運ばれる仕組みに関与する膜交通因子を絞り込む。 本研究計画では、培養細胞を用いた網羅的なスクリーニングを実施する予定であったが、形質転換培養細胞株を確立できなかった。この原因は調査中であるが、並行して、同様の計画に用いることができるシロイヌナズナ形質転換個体の確立を進めている。現在、T1個体の選抜を進めており、T2もしくはT3個体を用いることで、研究計画を遂行することができるとかんがえており、(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、細胞内の特定のオルガネラに局在するトランスポーターのひとつが、その特定のオルガネラと液胞をサイクルすることにより植物の塩ストレス応答に寄与する可能性を見出した。そこで、真核生物に共通する膜交通制御因子や、植物固有の膜交通制御因子の変異体背景で、このトランスポーターをGFP融合で発現させ、変異体細胞内で可視化することにより、このトランスポーターの局在を決定する膜交通因子や輸送経路に関する情報を収集する。すでに系統の確立は終了しており、次年度は共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析を実施する。そして、これまでに得られた知見を統合し成果を論文発表する。 また引き続き、塩ストレス応答時に植物ユニークな液胞輸送経路が運ぶ積荷の単離を行う。当初は培養細胞を用いることを想定していたが、形質転換培養細胞が獲得できず、引き続き原因を解明に努めている。一方で、同様の計画に実施できるシロイヌナズナ形質転換体の確立を進めている。この実験系ではシロイヌナズナ変異体を用いることが可能である点や、所属研究室の現有材料を用いることができる点が利点であり、引き続き、系統確立を進める。これにより本研究研究課題で掲げた目標を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は培養細胞を用いた研究を計画していたが、未だ原因不明の要因により培養細胞の形質転換が成功しなかった。この原因は、現在、調査中であるが、使用する材料をシロイヌナズナ形質転換個体に変更することで研究計画の遂行を目指している。計画の部分的な変更にともない、シロイヌナズナの栽培環境の整備や栽培に必要な消耗品費を計上する。また、引き続き、その後の分子生物学的・生化学的実験に使用する消耗品費、これまでに得られた研究成果の論文発表にかかる費用、学会に参加し国内外の研究者と情報交換し本研究の成果を発表するために必要な旅費に予算を計上する。
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