研究課題/領域番号 |
21K06211
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
酒井 達也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10360554)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光環境感覚 / フォトトロピン / 光屈性 / NPH3 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
植物が光源方向を感知し、物質生産性を最適化するように成長方向を調節する反応を光屈性という。動物の目にあたる特別な光受容器官を持たない植物が光源方向を認識する方法としては、光照射側の細胞と陰側の細胞が受ける光強度の違いが、光屈性誘導に働くなんらかのシグナル伝達物質(光生産物)の生産量の勾配を生みだし、光照射側では細胞伸長が抑制、陰側では逆に促進し光屈性を示すという、光生産物勾配仮説が提案されている。しかしながら、その分子機構の理解はこれまでほとんど得られていなかった。我々は、光屈性に必須の働きを示すシグナル伝達因子 NPH3 のリン酸化修飾調節が、シグナル伝達因子レベルの光順応機構を生み出すことを発見した。2021年度、本研究成果をまとめ、Plant Physiology誌及びPlant Signaling Behavior 誌で発表した。これまでの研究成果をふりかえり、我々は光屈性を誘導する青色光受容体フォトトロピン1とアダプタータンパク質 NPH3 の複合体の解離状態こそが「光生産物」の実体であること、明所における phot1 と NPH3 の解離による活性化状態と NPH3 の細胞膜再会合による不活性状態のバランス(勾配)の維持こそが光源方向の知覚として働くという光生産物勾配仮説の分子モデルを提案するに至り、2023年 J. Exp. Botany 誌にて総説として発表した。生物科学分野において本モデルを広く認めてもらうためには、phot1-NPH3 複合体の時空間的ダイナミクス及び生化学機能のさらなる理解を必要としている。本研究では、phot1、NPH3 のタンパク質ドメイン解析、細胞内局在解析及び物理的相互作用解析をさらに進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NPH3 天然変性ドメイン欠失変異体シリーズの作成を完了し、表現型及び YFP融合タンパク質の細胞内局在解析を進めている。驚いたことに、NPH3 の細胞内局在調節に働くことが他研究グループによって報告された C末端も含め、すべての天然変性ドメインを欠失させても、NPH3 は強光下では機能することが明らかになった(未発表)。C末端リン酸化と他天然変性ドメインの関係について重要な仮説が得られたので、現在細胞内局在解析を行い、その検証を進めている最中である。また天然変性ドメインをすべて欠失しても機能するNPH3が phot1 と働くのか phot2 と働くのか、遺伝学的、生化学的な解析を行うべく、現在準備を進めている。 phot1 リン酸化部位をすべてアラニン残基に置換した非リン酸化 phot1 変異体についても作成が完了し、表現型を観察した。その結果、phot1 自己リン酸化部位は光感受性調節に働くことが強く示唆された。これがリン酸化修飾による負の荷電によるのか、14-3-3結合による構造変化誘導によるのか、さらなる解析を進めている最中である。 またphot1 発現量が向上、減少したそれぞれの突然変異体を入手したのでその表現型を詳細に解析した結果、phot1 発現量が光屈性における光感受性に重要な影響を与えることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
NPH3 天然変性ドメインの光屈性における機能について、光屈性、細胞内局在、phot1相互作用のデータをまとめ、今年度いっぱいでおよその結論を得るべく解析をすすめる予定である。またphot1 のリン酸化修飾の機能、さらに phot1 天然変性ドメインを欠失した変異体を作成し、天然変性ドメインの機能についても明らかにすることを計画中である。phot1シグナリングの活性化状態が「phot1-NPH3複合体解離」状態であることをこれらの解析によって検証したのち、phot1、NPH3 それぞれに結合して働く新規光屈性シグナル伝達因子の探索をすすめる準備を開始しようと計画している。
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