研究課題
前年度末に4系統のTSS-seqデータを無事調製できた。今年度はシークエンスデータを用いて1)遺伝子発現の比較解析、および2)転写開始点(TSSクラスターピーク位置)の進化的安定性についての解析を行なった。1)発現解析の結果からは、用いた4系統のうち南域に生息するAltenb2が強光+低温ストレス応答を弱めていること(特にDREB1レギュロン)、光合成関連遺伝子群の発現を強めていること、を明らかにした。Altenb2は強光+低温ストレスによる光阻害をより強く受けることから、この系統はストレス耐性を弱め成長促進を強める方向へ遺伝子発現パターンを変化させることで、ストレスが弱い南域での生息にうまく適応したことが示唆された。また、Vash1系統は過酸化水素応答を弱めていること、ただしストレス下での過酸化水素の蓄積量は他の系統と変わらないことから、この系統は過酸化水素応答を担う転写制御ネットワークを部分的に弱めていることが明らかになった。こちら弱体化についてもAltenb2同様に生息地を南下させる際にストレス応答を弱めたのではないか、と考えられた。2)申請者はこれまでの研究で、植物のプロモーター(=転写開始点クラスター)にはカノニカルなGenic Topタイプ以外にもGenic Companion、Intragenic、Antisense、Orphanという非カノニカルなタイプが多数存在していることを明らかにしている(2009、2017)。今年度の解析では、これらの各タイプの転写開始点の位置の安定性並びに転写開始点近傍配列の安定性を評価することができた。詳細は省略するが、遺伝子間に散在し、生理学的な機能は持たないと私が考えているOrphanタイプのプロモーターはどのような面から見ても進化的に非常に不安定であるという私の仮説を支持する結果を得ることができた。
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Plant Physiology
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