葉緑体のチラコイド膜においては膜結合型プロテアーゼFtsHがタンパク質の品質管理に当たることが知られており、これまでに光によって損傷した光化学系II中心タンパク質D1の分解などに働くことが知られている。FtsHの働きは強光下で活発になることが知られていたが、高温下でのチラコイド膜タンパク質の品質管理機構及び葉緑体の熱ストレス応答機構については未だ知見が少ない。FtsHは元来は大腸菌の高温感受性変異株から見つかっており、植物ミトコンドリアにおいても高温ストレスとの関連が示唆され、さらに近年では葉緑体FtsHと高温との関連も報告され始めている。このような中、本研究では葉緑体FtsHの高温に対する機能解析を進めた。研究当初、シロイヌナズナのftsH5変異体(var1-1)が高温に対して脆弱であること、また変異体が高温下で誘導される形態形成において異常を示すことが認められた。しかしながら、別アリルにおいてはこの表現型は認められず、別の変異による影響と考えられた。マップベースクローニングとvar1-1変異体のゲノム配列のリシーケンスの結果、第一染色体における変異が原因であることが示唆され、その原因遺伝子をほぼ同定したこれはこれまで報告されていない遺伝子であり、今後、熱ストレスとの関連を究明していく。一方、他の葉緑体FtsHの熱ストレスへの影響を検討した結果、ftsH7ftsH9二重変異体で高温下で弱いながらも生育阻害が認められることが示唆され、熱ストレス下における葉緑体FtsHの働きが改めて示唆された。
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