研究課題
我々はゼニゴケゲノム中にコードされ、かつ陸上植物間で高度に保存され発現しているマイクロRNA(miRNA)の同定、そしてそれらが持つ生物学的意義を解析している。これまでmiR529c-SPL2転写因子mRNA,そしてmiR319-RKD/MYB21転写因子mRNAが構成する発現制御モジュールが見出され、それぞれ栄養成長から生殖成長への移行、栄養成長での無性芽形成に異常をきたすことに注目した。こうしたmiRNAが機能する場面がシロイヌナズナといった被子植物と共通性を示したことから、発現制御の細胞内の場にも共通性があると考え、ゼニゴケとシロイヌナズナそれぞれの利点を活かしながら、miRNAが前駆体の転写、前駆体RNAのプロセッシングが起こる細胞内の場について解析を加えた。シロイヌナズナで過去に報告された、前駆体RNAのプロセッシングが起こる細胞内の場としてのダイシングボディ(D-body)は、Dicer-like protein 1 (DCL1)の過剰発現体においてのみ観察されていた。今回野生型DCL1をdcl1-5変異体に可能な限り本来のゲノム配列に近い状況、つまりDCL1コード領域をイントロン構造も保持したまま固有プロモーターの配下に発現させる(ゲノム配列をできるだけ保持した状況)とD-bodyのような明確な構造を認めることはできなかった。一方で核内で広く雲状に広がっている様子が蛍光タンパク質融合DCL1を発現させた個体の細胞観察と、並行して行われた抗体染色を用いたホールマウント蛍光染色法による細胞観察双方で認められた。DCL1の細胞内局在性についての過去の文献報告の結果について再検討の余地がある。ゼニゴケのDCL1タンパク質のパートナー分子HYL1遺伝子の変異体を作成したところ、無性芽形成は正常に見える一方で、 生殖器床の形成遅延あるいは低下が観察された。
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Plant Physiology
巻: kiae135 ページ: kiae135
10.1093/plphys/kiae135
Plant Molecular Biology
巻: 113 ページ: 121-142
10.1007/s11103-023-01392-y
https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/RNAwatanabe/