研究課題/領域番号 |
21K06231
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
信澤 岳 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (40814463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物脂質 / 進化 / 環境応答 |
研究実績の概要 |
表層脂質は植物と外部環境とを隔てる最初のバリアである。表層脂質について乾燥耐性や耐病性,撥水性に注目した研究が進んできた一方,他の環境条件に着目した例や,表層脂質を構成する個々の脂質分子種が持つ特性および生理的意義にまで踏み込んだ知見は少ない。本研究において,花の表層脂質中の微量成分に着目し,高湿度条件に対する植物の応答・適応機構の解明を進めている。さらに,本機構の進化的な獲得起源や植物普遍性,環境適応進化の考察を加えることを目的としている。 本年度は,昨年度末に実施したRNA-Seq解析(シロイヌナズナ野生型と表層脂質中微量成分の生合成能を欠損した多重変異体の花において,湿度条件を変えての比較)で得られた結果を精査し,興味深い挙動を示す遺伝子を選出した。その後,それら遺伝子についてT-DNA挿入変異体の入手に加え,CRISPR/Cas9系を活用した新規変異体アリルの作出により,遺伝子機能解析の準備を進めてきた。また,表層脂質中微量成分の進化的獲得起源と推定している車軸藻類クレブソルミディウムの遺伝子に着目し,当該遺伝子の組換えタンパク質を調製しての酵素活性測定を行ったところ,目的表層脂質のin vitroでの合成活性の検出に成功した。一方,シロイヌナズナ多重変異体を背景に,当該のクレブソルミディウムの遺伝子を過剰発現させた形質転換植物体を作出して脂質解析を行ったが,目的脂質は全く検出されなかった。その原因として,植物体内における遺伝子発現が不十分であった可能性を考えており,現在,コドンをシロイヌナズナ向けに最適化した人工遺伝子を用いることに加え,表皮特異的かつ強力なプロモーターを用いることで再挑戦中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形質転換植物体を用いた検討では遺伝子発現が不十分であるなど,想定通りに進んでいない実験項目もあるが,高湿度に対する植物の応答機構の一端を探る手がかりとなりうる遺伝子を選出できていることや,表層脂質中微量成分の生合成酵素の獲得起源の特定に大きく迫れてきている。これら成果をふまえて論文投稿を見込める状況にもなってきているため,概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに選出した,湿度条件に応じて興味深い挙動を示す遺伝子について,機能欠損変異体系統を用いた表現型解析を行う。また,微量脂質成分の進化的獲得起源について,形質転換植物体を作出しての検証を引き続き進めていく。加えて,これまでに引き続き多様な植物種の表層脂質組成を植物の生育環境の特徴と紐付けながら解析していく。これら結果を中心に,次年度中の論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コストがかかると見込んでいた実験が比較的スムーズに進んだことや,消耗品の一部を別経費で購入したもので代用できたことなどから,実質的に前年度からの繰越分を使用せずに済んだためである。ただし,これまでに購入した消耗品等の残量もわずかであることや,論文投稿に向けて加速的に行いたい実験項目もあるため,次年度には当初の想定よりも多額の研究費が必要になると見込んでいる。
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