研究課題
基盤研究(C)
表層脂質は陸上植物にとって,外部環境に対する最初のバリアである。表層脂質はさまざまな分子より成るが,個々の成分が持つ役割に注目した知見は乏しい。本研究の中で,表層脂質中のマイナーな成分であるワックスエステル(WE)生合成能を欠損したシロイヌナズナ変異体が,高湿度環境下で形態異常を示す原因の一端を知ることができた。また,WE合成酵素WSDの進化的起源について探ったところ,車軸藻植物門クレブソルミディウムであることが実験的に証明できたことで,植物の環境応答と進化についての理解が深まった。
植物生理学
植物の表層脂質の役割について,主に乾燥環境への耐性という視点での研究がこれまでに多数行われてきた一方で,その他の環境要因に着目した例は乏しかった。本研究により,表層脂質中のマイナーな成分が高湿度条件下での植物の生存において持つ意義や,その進化的な由来がわかってきた。今後も地球規模で気候が大きく変動することが予想されるが,高湿度条件における植物の基本的な応答の一端の理解は,実用植物を安定的に活用していくための手がかりへと繋がる期待もある。