研究課題/領域番号 |
21K06233
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
賀屋 秀隆 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80398825)
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研究分担者 |
小林 括平 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (40244587)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / シロイヌナズナ / FT / 花成 / シスエレメント |
研究実績の概要 |
本申請研究では,FT 遺伝子のゲノム上のcis-elementをゲノム編集技術により直接編集し,native状態でのcis-elementの機能解明をおこなっている.これまでにFTの翻訳開始点から5.3kb上流にあるCCAAT配列(CCAAT1と命名)に変異導入することに成功している.CCAAT1より500bp上流のCCAAT0と, 2kb, 2.3kb, 4.2kb下流にあるCCAAT3, CCAAT4, CCAAT8への変異導入にも成功し,FT発現解析および花成測定もおこなってきた.これまでの成果より,同じCCAAT配列でありながら,CCAAT1のみがFT遺伝子の発現制御において重要な働きを担っていることが明らかになりつつある.今後,変異体の単離が難航しているCCAAT2, CCAAT5-7の各変異体の単離を目指す.並行して,CCAAT以外のcis-elementとして翻訳開始点近傍にあるE-box, CORE1, CORE2の変異体の単離も進めてきた.これらの各単独の変異では明確な花成への影響は見られなかったが,CORE1; CORE2の二重変異体ではFT遺伝子の発現量の低下と劇的な花成遅延が観察された.これらの結果を踏まえ,今後CCAAT1;CORE1とCCAAT1;CORE2の二重変異体,CCAAT1;CORE1;CORE2三重変異体を単離・解析することで,それぞれのcis-elementがどの程度花成制御に寄与しているのかを明らかにする. シロイヌナズナのFT遺伝子は他の植物の花成制御においても普遍的に機能する.FT遺伝子の発現制御についても,植物種間で保存され機能しているcis-elementが明らかになれば身近な栽培品種でも,ゲノム編集技術により花成を容易に制御出来ると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに変異導入に成功していないCCAAT2, CCAAT5-7への変異導入実験を引き続きおこなう.変異導入効率改善のため複数のguide RNAを用いている.cis-elementを標的とするので選択可能なguide RNAは限られるが,作製可能なguide RNAを全て作成する.さらに,Cas9遺伝子の発現量を最適化するために複数のpromoterを試す.新たなcis-elementへの変異導入もおこなう.具体的にはP1, P2そしてMyc3である.P1, P2はFT遺伝子発現を正に制御するcis-element,Myc3は負に制御するcis-element候補である.さらには,CCAAT2-8を含む4.3kb領域を欠失させることを試みている.これにより,CCAAT1によるFT遺伝子発現制御において,翻訳開始点から5.3kb離れた距離にあることがCCAAT1の機能に必要なのかどうかを検証する.これまでに,4.3kb領域を欠失させることが出来ることは確認できている.しかし,問題なのはこの欠失変異が次世代に伝播してないことである.理由として,欠失が見られるのは体細胞で,将来花粉・卵細胞となる生殖細胞で欠失がおこっていないことを考えている.現在,生殖細胞での変異導入効率を高めるために加温処理をおこなっている.すでに得られているcis-elementの変異体については,引き続き花成測定実験とFT遺伝子の発現量解析をおこなっている.
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今後の研究の推進方策 |
1.FT遺伝子の転写制御に関わるCONSTANS (CO) の過剰発現体35S::COと新たに単離したcis-element変異体との掛け合わせをおこない,CO過剰発現下でのcis-elementの機能を解析する.
2.現在解析しているColumbiaに加えて他のaccessionについても検証する.FTのpromoter領域についてL. er, Ws, C24, An-1, Cvi-0, Eri, Kyo, Sha間で比較すると,CCAAT配列の共通性が見えてきた.特にCCAAT0, CCAAT1, CCAAT5-8については調べたaccession全てにおいて保存されていたが,CCAAT2-4については保存されておらず,さまざまな欠失・挿入などが見られる.これらのaccessionにおいてCCAAT1について変異導入を試みる.それにより,CCAAT1の機能の保存性について検証する.
3.CCAAT1に変異をもつ野外系統を見つけた.この系統は花成遅延を示す.ただ,CCAAT1以外にもColとの違いが散見されるため,CCAAT1の変異が花成遅延の原因であるかは不明である.そこで,塩基置換技術によりCCAAT1の変異を野生型に改編し,花成を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度,マイクロチップ電気泳動装置MultiNAの購入を検討していたが,交付金が予定額より減額されたため購入が叶わなかった.代わりに,FT遺伝子の発現解析に注力するために,昨年度に引き続き,繰り越し分をリアルタイムPCR関連試薬の購入に充てる.
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