研究課題/領域番号 |
21K06234
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
武田 征士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90508053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヨモギ / 虫こぶ / 葉 / 茎 / 維管束パターン / マイクロCTスキャン |
研究実績の概要 |
令和4年度は、①ヨモギ虫こぶ内での時空間的な遺伝子発現パターンの把握、②虫こぶで高発現するMADS遺伝子(AiAGAMOUS/AiAG)の相互作用因子探索、③マイクロCTスキャンによる虫こぶ形成の詳細な形成機構の解明を試みた。①については、AiAGをクローニングしたベクターからRNAプローブを作成し、虫こぶサンプルについてin situ hybridizationを行ったが、クリアなシグナルは得られなかった。コントロール実験より、手法に間違いが無いことから、虫こぶという特殊なサンプルではin situ hybridizationのシグナルが得にくい可能性が考えられた。切片組織観察から、虫こぶ内細胞が予想に反して高度に液胞化していることが分かり、これが原因のひとつと考えられる。②については、Yeast Two Hybridスクリーニングにむけて、虫こぶ発現遺伝子のライブラリーの作成を何度も試みたが、酵母菌株の生育不良により、ライブラリー作成には至ることができなかった。③については、4種類のヨモギ虫こぶ(葉2種類、茎2種類)のイメージング結果を詳細に観察し、虫こぶ中にある虫室と維管束のつながりに一定パターンがあることが分かった。すなわち、葉にできる2種類(エボシ、ケタマ)では、ホスト植物と虫室の間に細い維管束が新たに形成されているが、茎にできる2種類(クキワタ、クキコブ)では、ホスト植物の維管束上に直接虫室があるようなパターンであった。作られる組織によって、維管束形成やホスト維管束の使い方が異なっていることが示唆され、同じホスト植物での虫こぶ形態の多様性を生みだすメカニズムのひとつとなっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までブラックボックスであった、虫こぶとホスト植物の維管束のつながりが明らかになったことで、当初目的を果たしたと言える。さらに、昨年度は難しかったエボシ・クキワタについても、染色法などの工夫により明瞭になり、2年目としては計画以上に進めることができた。一方で、発現解析は組織の構造上の難しさ、相互作用因子探索は酵母菌株あるいは技術的な問題により良い結果が得られておらず、3年目の課題として進める。以上の事から、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MADS遺伝子のin situ hybridizationについては、組織の構造上困難であることが分かったため、プロモーター:レポーターアッセイに切り替えて検証する。虫こぶで発現する転写因子の過剰発現株作成を進めており、表現型解析を進める。相互作用因子探索についてはライブラリー構築手法を変更、すなわちMatingから直接導入に切り替えて進める。ヨモギ虫こぶの構造解析、RNA-seqデータについてまとめ、論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度で51,247円が余ったが、これは他予算で学会参加ができたためである。次年度予算に計上し、旅費または消耗品の費用として使用する。
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