研究課題/領域番号 |
21K06238
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
椎名 隆 摂南大学, 農学部, 教授 (10206039)
|
研究分担者 |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (30734107)
石崎 陽子 摂南大学, 農学部, 助手 (50423869)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 葉緑体 / シグマ因子 / ストレス / 光合成 / 反応中心 |
研究実績の概要 |
葉緑体ゲノムにコードされた光合成遺伝子群は、主にバクテリア型のRNAポリメラーゼPEPによって転写される。PEPはシグマ-70型プロモータを認識して転写を開始し、そのプロモータ認識には転写開始因子シグマ因子が関係する。シロイヌナズナが持つ6種のシグマ因子の中で、Sig5は強光などのストレスで誘導される唯一のシグマ因子である。Sig5は、光化学系II反応中心のD2タンパク質をコードするpsbDの光応答プロモーター(LRP)を特異的に認識することが知られており、光合成のストレス適応と関係している可能性がある。しかし、その生理的、分子的機能には分からない面も多い。今年度は、強光ストレスおよび塩ストレス環境におけるSig5の生理的役割を解析した。 その結果、(1) 強光ストレスについては、SIG5が光化学系反応中心遺伝子(psbA、opsbD、psaAB)の強光誘導に特異的に関わっていることを明らかにした。(2) 塩ストレス応答については、Sig5発現は強く誘導されるが、光化学系反応中心遺伝子の発現誘導は見られなかった。一方、sig5ノックアウト変異体の解析から、SIG5はストレス環境で低下するpsbD LRP活性の維持に関与していることが示唆された。(3) さらにSig5の塩ストレス応答の日周変化を調べたところ、塩ストレスによる発現誘導が光に強く依存していること、明らかな日周性を示し朝は誘導が大きいが夕方には弱まることがわかった。これらの結果は、Sig5による光合成遺伝子発現制御を介したストレス適応に、サーカディアンリズムが関与する可能性を示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体シグマ因子Sig5のストレス誘導と葉緑体コードの光合成遺伝子群の発現応答の解析から、ストレス適応におけるSIG5の生理的役割について、強光ストレス環境での光化学系反応中心遺伝子の発現強化や、塩ストレス環境でのpsbD LRP活性の維持に関わっている可能性を明らかにした。これらの結果は、次の段階でのSig5-光化学系反応中心遺伝子制御系の機能や進化の研究につながる。
|
今後の研究の推進方策 |
計画に沿って、Sig5が認識するプロモータ(psbD LRP)の機能・構造解析や、その生理的役割の解析を進めていく。また、今年得られた結果を基礎に、Sig5やpsbD LRP活性のストレス応答性の進化についても研究を展開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に進める予定だった葉緑体形質転換技術を使ったpsbD LRPの改変の研究が、予定よりも若干遅れているために、その解析に用いるRNAやタンパク質分析の費用の執行が遅くなった。2022年度で、他の研究テーマとともに解析を実施する予定である。
|