研究課題/領域番号 |
21K06239
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
星野 敦 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (80312205)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トランスポゾン / エピジェネティクス / 植物 / アサガオ |
研究実績の概要 |
本研究では、トランスポゾンがコードする転移酵素とエピジェネティックな変異(エピ変異)の形成並びに遺伝子発現制御の関連を明らかにすることを目的とする。 エピ変異は遺伝子発現を制御することがあり、多様性の獲得と進化に寄与するとされる。植物ではエピ変異の多くをトランスポゾンが誘発しており、その転移酵素もエピ変異の形成に関わるとされてきた。一方、アサガオの刷毛目絞りは薄色地に濃色のストライプを付与する変異である。また、ストライプのない薄色、あるいは濃色の花だけを咲かせる個体を分離する。これまでに、第10染色体上の花色遺伝子のプロモーターにTpn1ファミリーのトランスポゾンが挿入し、その発現がヒストン修飾の変化を伴い変化することを明らかにしている。また、第3染色体上に座上し、機能的な転移酵素を発現するトランスポゾンTpn2を発見している。 本研究では、1)転移酵素による近傍遺伝子の発現抑制、2)転移酵素によるトランズポゾンとその近傍配列へのエピ変異の付与、3)トランスポゾンの反復配列とDNAメチル化の関連、について解析する。今年度はまず、刷毛目絞り変異体の全ゲノム配列をもとに、Tpn2以外に機能的な転移酵素をコードする可能性があるトランスポゾンがあるか否かを検討した。その結果、刷毛目絞り変異体では野生型よりも多くのトランスポゾンが、機能的な転移酵素をコードすることが示唆された。また、転移酵素を過剰発現体の作成と、DNAメチル化の新しい解析方法の開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一分子リアルタイムDNAシークエンサーを利用した刷毛目絞り変異体の高精度な全ゲノム配列をもとに、転移酵素をコードするTpn1ファミリーのトランスポゾンの配列を解析した。野生型では、第6染色体上のTpnA1と第3染色体上のTpnA2の2コピーが、それぞれ2種類の転移酵素であるTNPAとTPNDをコードしている。一方で、刷毛目絞り変異体では、野生型とは異なる座位に4コピーのTpnA1が存在し、野生型のTpnA1とは転移酵素のアミノ酸配列の置換を伴う多型も存在した。また、第14番染色体上の1コピーにはTNPDのコード領域にフレームシフト変異も存在した。一方、TpnA2は1コピーのみであったが、やはり転移酵素のアミノ酸配列の置換を伴う多型が存在した。 転移酵素による近傍遺伝子の発現抑制やエピ変異の付与を検討する為、TpnA2のTNPA過剰発現体の作成に着手した。TpnA1ファミリーのトラスポゾンはコピー数が多いことから、TpnA2に由来するTNPA cDNAのPCR増幅は困難であることが予想され、またTNPAがsmall RNAを介した転写後抑制を受けることも予想された。その為、アミノ酸配列を保持したまま塩基配列を改変した人工遺伝子の作成を計画していた。しかし、プライマーを工夫することでTNPA cDNAを増幅することができ、アサガオの他の変異体の解析からTNPAを抑制するsmall RNAの発現レベルは低いことが示唆された為、人工遺伝子の代わりに増幅したcDNAをTNPA過剰発現体の作成に用いることにした。 一方、Tpn1ファミリーのトランスポゾンはゲノム中に300コピー以上存在する。その為、次世代型シークエンサーのショートリードを利用する従来法ではDNAのメチル化を調べることが困難であった。そこで、ロングリードが得られるシークエンサーを用いた、新しい解析方法の開発に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
TpnA1とTpnA2について、それぞれの転移酵素遺伝子の発現などを検討することで、刷毛目絞り変異体で機能的な転移酵素を発現するトランスポゾンを明らかにする。また、TNPA cDNAを過剰発現する刷毛目絞り変異体を作出して、転移酵素による近傍遺伝子の発現抑制やエピ変異の付与を検討する。トランスポゾンの反復配列とDNAメチル化の関連についても、TpnA1の反復配列を欠損した変異体の作出を試みる。さらに、DNAメチル化の新しい解析方法の開発を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた一分子リアルタイムDNAシークエンサーによるDNAメチル化の解析について、先進ゲノム支援によるサポートを受けることができた為。また、人工遺伝子の合成を延期した為。DNAメチル化については、他のシークエンサーも利用して解析を試みる。人工遺伝子の合成については、その必要性についての検証を引き続き行う。
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