研究課題/領域番号 |
21K06244
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中島 忠章 横浜市立大学, 理学部, 助教 (40631213)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 三次元デバイス / 細胞外マトリックス / 牽引力 / 応力 / 足場物性 / 相互作用 / 生殖器 / 血管 |
研究実績の概要 |
発生期における上皮立体構造形成には、外環境より発生する物理作用が重要であるが、細胞もまた、牽引力を介した足場の網目構造変化などによって、足場の力学的特性を変化させている。この細胞と足場の力学的特性フィードバック機構は、腸上皮の突出や血管の陥入など、上皮立体構造形成に不可欠であると考えられるが、フィードバック機構の詳細と上皮形態形成への影響は不明である。 本研究では、比較可能なin vitro系を用いて各種細胞と足場の力学的特性をデザインし、細胞と足場の力学的特性のリアルタイムモニタリングを通して、細胞と足場の力学的特性のフィードバック機構の詳細と共通性を解明し、様々な上皮立体構造形成への影響を解析することを目的としている。 前年度は、生体由来のメタクリロイル化ゼラチン (GelMA) を用いてゲルを作製し、足場の硬さ/物性/パターンを変化させ、ゲルの形状を管状にする方法を確立した。さらに、GelMAに各種生体マトリックス因子を包含させゲル化させる方法も確立してきた。本年度は、この培養系を用いて子宮腺の誘導に物理的因子の関与を検証したところ、in vitroでは誘導不可能であった子宮腺原基の誘導に成功した。さらに、足場物性には間質細胞の寄与が大きいため、GelMAに子宮間質株細胞を含有させ、長期間培養可能な足場条件と培地条件を決定した。 3Dモデルに最初に用いる予定である生殖器の上皮細胞に関して、多能性幹細胞を用いて実験を行い、SMAD2/3シグナルと細胞の凝集による圧力が、雌性生殖器の原基となるミュラー管への分化に関与していることが解明しており、これらをまとめて論文を投稿している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度確立したGelMAを用いた各種足場物性を変化させた実験系を用いて、平面ではなく管状に培養するというシンプルな物理的作用が、子宮腺形成に十分であることを証明した。現在は、子宮上皮細胞に膜型EGFPを安定的に発現する細胞を作製し、細胞形態をライブイメージング可能となっており、管状足場が細胞形態と応力にどのように影響するのかを解析している。さらに、子宮上皮もまた、足場構成を変化させるかを検証しており、双方向性の解析を始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
In vitroでは誘導不可能であった子宮腺を、初めて株細胞から誘導することに成功した。2023年度は、これを掘り下げ、子宮上皮が足場構成を変化させるかを検証する。 具体的には、足場のパラメーターとして硬さと形状を振り、細胞への影響として細胞形態/分化状態/増殖率/アクチンファイバー形成の変化を測定し、細胞播種前後に足場への影響として、ゲル内ファイバー構造/蛍光物質の透過性を測定する。研究がまとまり次第、論文投稿を目指す。 さらに、足場に間質細胞を含有させることにより、より成熟した子宮腺をin vitroで誘導することにも挑戦する。
|