研究課題/領域番号 |
21K06264
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
碓井 理夫 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (10324708)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 侵害逃避行動 / ショウジョウバエ / 環境依存性 / 寄生蜂 / 細胞内発火抑制 / カルシウム依存性カルシウム放出 / 複数感覚情報の統合 |
研究実績の概要 |
腹部ロイコキニンニューロン(ABLKニューロン)の神経活動は、感覚入力を与えなくても自発的かつ持続的な振動を示す。令和3年度の研究により、この神経活動が、体液浸透圧に応じて変化することを実証できた。とくに、高い浸透圧をもつ媒質中で、自発的・持続的な神経活動がほぼ消失することを突き止めた。さらに、Belly rollタンパク質が、低浸透圧下での持続的な神経活動に必須の因子であることを明らかにした。これに加えて、光遺伝学的に神経活動に介入することにより、弱いながらも、ABLKが痛覚逃避行動を誘導する活性を持つことが示せた。これらの研究結果から、ABLKは、本来は痛覚逃避行動を誘導することができるが、それ自身の持続的なカルシウム活動に依存する何らかの細胞内メカニズムにより、強く抑制されていると考えられる。現在、この仮説を検証するために、自発的・持続的な神経活動を抑制したり、カルシウム依存的なスパイク抑制機構を阻害したりすることで、強力な行動誘導活性が示せるかどうかを検証中である。こうした神経生理メカニズムの解明と並行して、Belly rollタンパク質の分子機能をあきらかにすべく、生理機能的あるいは物理化学的に相互作用する標的タンパク質の同定を試みている。すでに、ABLKニューロンに発現している様々な膜貫通型タンパク質群との相互作用を検討しており、これまで複数の候補タンパク質に絞ることに成功しており、実証作業を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究により、ABLKニューロンが体液浸透圧に応じて神経活動パターンを変えることを実証できた。さらに、Belly rollタンパク質が、低浸透圧下での持続的な神経活動に必須であることを突き止めた。これに加えて、光遺伝学的に神経活動に介入することで、ABLKが弱いながら痛覚逃避行動を誘導する活性を持つことが示せた。これらの研究結果から、ABLKは、本来は痛覚逃避行動を誘導することができるが、それ自身の持続的なカルシウム活動により抑制されていると考えられる。現在、この仮説を検証するために、カルシウム活動を抑制したり、カルシウム依存的な発火抑制機構を阻害したりすることで、強力な行動誘導活性が示せることを検証中である。こうした神経メカニズムの解明と並行して、Belly rollタンパク質の分子機能をあきらかにすべく、機能的・物理的に相互作用する標的タンパク質の同定を試みている。これまでに、ABLKニューロンに発現している様々な膜タンパク質との相互作用を検討しており、現在、複数の候補タンパク質に絞って検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ABLKニューロンにおけるカルシウム依存性の発火抑制機構の分子実体を解明するために、候補チャンネルの特異的な調節因子を過剰発現させるなどのアプローチを進める。さらに、ABLKニューロンにシナプスを形成する上流ニューロンのうち、浸透圧の変動情報をになう入力先を検索しており、すでに候補ニューロンを同定している。これに加えて、Belly rollを発現する、ABLKニューロン以外のニューロンの機能解析も続行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の試薬およびショウジョウバエ 飼育用のプラスチック製品などの消費量が予定を下回ったため、次年度使用額が生じた。今年度は、相当数のショウジョウバエ系統を樹立・維持する予定である。したがって、次年度使用額は、今年度の予算とあわせて、試薬およびショウジョウバエ飼育用のプラスチック製品などの購入に充当される予定である。
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