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2021 年度 実施状況報告書

甲殻類自律運動器官における自律メカニズムの転換機構

研究課題

研究課題/領域番号 21K06271
研究機関杏林大学

研究代表者

田中 浩輔  杏林大学, 保健学部, 教授 (50236585)

研究分担者 伊藤 慎  杏林大学, 保健学部, 講師 (00460139)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード甲殻類 / 自動能 / トランスクリプトーム解析 / 個体発生
研究実績の概要

甲殻類の自律運動器官の自動性の源を調べるため、クルマエビ成体の心臓や腸管を用い自動性の発現機構を明らかにすることを目的として研究を進めた。
分子生物学的アプローチによる研究では、基礎データの収集を第一の目的として、RNAseq(トランスクリプト―ム解析)によるmRNAライブラリーの作成を行った。実験では、クルマエビ成体の中枢神経系、心臓、筋肉、消化管等のいくつかの部位を採取し、total RNAを回収し、イルミナ社製Hi-seq PE(100bp)を用いてRNAseqを行った。実験では2個体から抽出したRNAを混合したものを用いた。上記の実験により114795種類のtranscriptomeを得た。さらに、得られた情報を元に推定トランスクリプト配列を構築するDe novoアセンブル解析、およびそれらについて既存の無脊椎動物の遺伝子配列データベースを参照および比較するBLAST検索を行い、アノテーション情報の付加も行った。
次に 電気生理学的アプローチによる研究では、クルマエビ成体の心筋および腸管を構成する筋に対する様々な生理活性物質の作用を調べた。心臓および腸管の単離標本にたいし、グルタミン酸、生体アミン類、特にドーパミンの作用が強いことがわかった。さらに、それらの薬理効果が筋肉直接の作用であることを推定するためにテトロドトキシン投与下による当該薬物の作用を調べた結果、心筋では脱分極反応が見られたが、自律リズムを引き起こすことは見られなかった。一方、腸管標本ではドーパミン投与が自律リズムを引き起こし、腸管構成筋に自律リズムを惹起できることが示唆された。。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

分子生物学的手法を用いた解析に関しては、概要にある通りRNAseqによるmRNAライブラリーの作成することができた。さらに既存の無脊椎動物の遺伝子配列との比較するBLAST検索を行ったのでほぼ当初の計画通りに進んでいる。
一方、電気生理学的手法に関しては、心筋および腸管構成筋の薬理学的及び電気生理学的特徴を調べた結果を得た。クルマエビ成体では腸管構成筋の細胞内記録に成功しておらず今後さらに進める必要があり、自律運動を構成する筋の性質を引き続き明らかに必要がある。したがって、総合的にやや遅れていると評価した。

今後の研究の推進方策

まず、イオンチャネル解析を中心とした分子生物学的手法として、De novoアセンブル解析により得た結果から、いくつかのカチオンチャネルなどの発現を調べる。それらの情報をもとに、RT-PCRにより高発現の部位を調べ、上記チャネルのクローニング及び一部の配列を元にin situ hybridization などにより発現部位の詳細な特定を行う。
次に、腸管からの細胞内誘導法を確立させ、薬理学的に惹起される自律運動の起こすイオンメカニズムをイオン濃度の変化、通電による応答性などを調べ詳しい特徴づけを行う。
また、クルマエビを用いた幼生における、形態の変化を組織学的に調べる。幼生の段階で数回変態するが特にノウプリウス幼生終わりからミシス期にかけて食性、行動が変化している。そこでこれらの時期での心臓及び腸管の形態について調べる。

次年度使用額が生じた理由

21年度は、当初の計画よりRNAseqに関するデータ解析等に用いた金額が安価であったため、残金が発生した。該当予算に関しては、データ解析においてRNAseqで得られた解析結果にオプションとして上記解析に用いたサンプルの部位間での発現量の違いの解析も可能であることから、これらの解析に使用する予定である。
また、電気生理学的手法で予定していた結果の確定が進まなかったため、年度内に使用薬品の購入および一部用品の購入が実施できなかった。そのため予算全額の執行には至らなかった。しかし、薬理学的実験による筋の自律運動の惹起が引き起こせることが分かったことにより、さらなる薬理投与実験を進展するめどが立ったことから、その生理活性物質の受容体アゴニストやアンタゴニストをはじめとする関連薬物を新規購入する必要性が生じた。そこで21年度の未使用の予算を執行する予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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