研究課題
自閉症スペクトラム障害は、社会性行動の障害などを特性とした神経発達障害の一つである。自閉症スペクトラム障害の発症の原因の1つとして、大脳皮質の構築が異常であることが報告されている。本研究では、大脳皮質の構築が異常の原因となる自閉症の発症の分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。転写因子ATF5の欠損マウスは自閉症様行動異常を示し、大脳皮質の発達の異常が示された。大脳皮質におけるATF5の標的因子を同定するためにRNAシークエンス解析を行ったところ、ATF5欠損マウスにおいてエピジェネティックな遺伝子発現制御や胎仔期の組織形成に関与する因子の発現が変化していた。その中で、リボヌクレアーゼファミリーの一つの因子のmRNAとタンパク質の発現量を解析したところ、胎仔期ATF5欠損マウスの大脳皮質で減少していることがわかった。この因子は、RNAプロセシングに関与し、また、エピジェネティックな遺伝子発現制御に関与していることが報告されている。以上のことから、ATF5の発現がエピジェネティックな遺伝子発現制御に関与し、大脳皮質の層構造の構築に影響を与える可能性があると考えられる。一方で、自閉症様行動を示すモデルマウスのニューロンにおいて、情報伝達が行われるシナプスの機能や形態に異常があることが報告されている。シナプスが形成される樹状突起スパインの形態を解析したところ、ATF5の発現が抑制された初代培養細胞では、樹状突起の形態が変化し、スパイン形態の分布が変化していた。また、初代培養細胞においてATF5を高発現させたところ、その多くが死滅した。ATF5の発現レベルの変動は、神経細胞の生存や形態形成に重要であることが示唆された。
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Cell and Tissue Research
巻: 396 ページ: 85~94
10.1007/s00441-024-03871-0
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