研究実績の概要 |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。感覚神経の温度受容体としてTRPチャネルが知られているが、TRP以外の温度受容体については未解明の点が多い。本研究者は、これまでに温度情報が視覚と同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることや(Ohta, Ujisawa et al., Nature commun, 2014)、DEG/ENaC型のメカノ受容体であるDEG-1が温度受容体として機能し、低温耐性を正に制御することを見つけた(Takagaki, Ohta et al., EMBO reports, 2020)。本研究では、Gα上流のGタンパク質共役型(GPCR)の温度受容体の単離を目指す。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRHを単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するのかを生理学的に明らかにすることを目的として解析を進めている。また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進めている。 当該年度は、GPCRであるSRHが実際に温度を受容しているかを、アフリカツメガエルの卵母細胞や昆虫の細胞系をもちいて生理学的に解析を進めた。その結果、アフリカツメガエルの卵母細胞ではSRHとその下流のGタンパク質を発現させると、卵母細胞自体の調子が悪くなり、電気生理学解析が困難であった。一方で、昆虫の細胞系にSRHを発現させたところ、温度に応答している結果が得られた。また、遺伝学的解析から温度受容情報伝達系に関わる新規の変異体が得られた。温度受容ニューロンにおける温度受容体を含む温度情報伝達の変異体を用いて、その温度応答性の低下が下流の神経回路に与える影響をカルシウムイメージング法で測定した。
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