研究実績の概要 |
社会性昆虫におけるコミュニケーションと生体リズムの同調の詳細なメカニズムは未解明であり、個体に組み込まれた測時機構である概日時計に、社会などの集団生活における他個体との相互作用がどのような影響をおよぼすのかは明らかになっていない。本研究では、社会的同調と時計遺伝子の直接の関与を明らかにすることを目指している。本年度は、RNAシークエンシング解析により新たに時計遺伝子cycle,clockwork orangeと予想される配列と、遺伝子発現解析に用いるリファレンス遺伝子の配列が得られた。昨年度得られた時計遺伝子period,Clock,cryptochrome,vrilleの部分配列も含めてリアルタイムPCRを用いて遺伝子発現解析を行った。その結果、明期12時間暗期12時間のサイクル下において、period,cryptochrome遺伝子は暗期の中頃にピークを持つ発現が見られた。cycle,clockwork orange遺伝子は暗期の中頃にピークを持つ発現が見られた。他の昆虫同様これらの遺伝子がリズム発振に重要な役割を担っていると考えられる。これらの時計遺伝子の機能解析のためインジェクターを用いて腹部に二本鎖RNAを導入し、RNA干渉実験試みているが、現在までにどの遺伝子を導入しても活動リズムに有意な変化は観察されていない。二本鎖RNAの再設計、濃度等などを検討し試行中である。脳内の時計遺伝子発現細胞の所在を明らかにするため、period遺伝子配列を用いてプローブを作製しin situ ハイブリダイゼーションを行った結果、脳内背側にperiod発現している可能性のある神経細胞群が観察された。他の時計遺伝子でもin situ ハイブリダイゼーションを行い、時計細胞の所在を詳細に明らかにする必要がある。
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