研究課題/領域番号 |
21K06278
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
明正 大純 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00781808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Oryzias latipes / sex-determining gene / LTR retrotransposon / Sushi-ichi / Gsdf |
研究実績の概要 |
本研究では、性決定遺伝子が頻繁に交代するメダカ属において、性決定遺伝子へ進化途上の祖先遺伝子からの変化が小さい、複数の性決定遺伝子が共存する稀有なミナミメダカの長崎県野生個体群を用いた。本個体群ではミナミメダカに共通の性決定遺伝子Dmyに加えて、LTR retrotransposonの挿入によって誕生した第2の性決定遺伝子GsdfneoY、GsdfneoYを特異的に抑制する第3の性決定遺伝子の同定とその誕生の分子機構を解明する。これらによって、脊椎動物における遺伝性決定の多様化の大きな要因であると考えられる、新規性決定遺伝子を連鎖的に生み出す新たな分子機構を明らかにすることを主目的とした。2021年度は、(1)第2の性決定遺伝子であるGsdfneoYの原因配列であるSushi-ichiの転移活性と(2)第3の性決定遺伝子の機能時期を推定した。 (1)長崎県個体群の2個体の全ゲノムを次世代シーケンサーで読み、100箇所以上のSushi-ichiの挿入カ所の候補から15カ所をPCRによって検出可能にした。その後、PCRによって15カ所の挿入の有無を確認した。その結果、全ての個体で挿入が確認できたのは3カ所のみであったことから、Sushi-ichiはGsdfneoYを持つ個体群内で高い転移活性を持つことが推定された。 (2)第3の性決定遺伝子を持つと推定される、GsdfneoYを持つ雌が約半数出現する維持系統の初期生殖腺分化を解析した。その結果、孵化後10日においてGsdfneoYの高発現を示すにもかかわらず、卵減数分裂の指標となる遺伝子である42sp50の高発現が半数で確認できた。この結果は、これまでに同定されてきたメダカの性決定遺伝子と同様に第3の性決定遺伝子が、孵化後10日までに機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本個体群ではミナミメダカに共通の性決定遺伝子Dmyに加えて、LTR retrotransposonの挿入によって誕生した第2の性決定遺伝子GsdfneoY、GsdfneoYを特異的に抑制する第3の性決定遺伝子の同定とその誕生の分子機構を解明することを目的とし、第2と第3の性決定遺伝子の解析を並行して行っている。本年度計画していた、第2の性決定遺伝子であるGsdfneoYの原因配列であるSushi-ichiの転移活性と第3の性決定遺伝子の機能時期の推定を達成でき、両者に進捗が見られたことから、(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、第2の性決定遺伝子GsdfneoYの誕生機構解明のために以下の2つを行う。1) プラス鎖のSushi-ichiのmRNAを受精卵にmicroinjectionすることにより人為的なSushi-ichiの転移を起こす。2)マイナス鎖のSushi-ichiのmRNAによって人為的なSushi-ichiの転移を抑制できるかどうかを検証する。また、第3の性決定遺伝子同定のために以下の2つを行う。1) Hd-rR系統との交配により、第3の性決定遺伝子の遺伝様式を決定する。現在は第3の性決定遺伝子を持つGsdfneoY(+)雌とHd-rR雄を交配したG1からGsdfneoY(+)雌が出現し、G1からGsdfneoY(+)雌とHd-rR雄を交配したG2からGsdfneoY(+)雌が得られている。2) G2のGsdfneoY(+)雌を20個体程度確保したのち、第3の性決定遺伝子座を同定する。
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