研究課題
水圏に生息する藻類の多くは、二酸化炭素とその固定を触媒する酵素であるルビスコを一か所に集め、効率的に二酸化炭素を有機炭素へと変換している。これは二酸化炭素濃縮機構と呼ばれ、その中心にはルビスコタンパク質が高密度に集積したピレノイドが存在する。しかし、ほとんどの藻類でピレノイドを構成するタンパク質やその構築メカニズムは不明のままである。本研究では海産の単細胞藻類であるクロララクニオン藻を用いて、ピレノイドで働く分子機構の解明を目指している。2021年度は、単離ピレノイドのプロテオーム解析で検出されたピレノイド構成タンパク質候補(約150個)の中から、GFPタグやポリクローナル抗体を用いてピレノイドに局在する複数の新規タンパク質を特定した。これらのタンパク質には、二酸化炭素濃縮に関与すると思われる酵素タンパク質や物質輸送に関わると思われる膜タンパク質に加えて、ルビスコの集積に関与すると思われるリンカータンパク質候補も含まれていた。興味深いことに、それらのタンパク質をコードする遺伝子はクロララクニオン藻にのみ保存されており、他のピレノイドをもつ藻類には存在しなかった。これは藻類群間でピレノイドを構成するタンパク質が多様化していることを強く示唆する結果であった。これらの研究成果は、多様な藻類に普遍的に存在するピレノイドの進化を明らかにするための大きな手掛かりとなる。一部の研究成果は国内学会で報告済みである。
1: 当初の計画以上に進展している
一年目でのリンカータンパク質候補の発見は、本研究計画の大きな目的である「ピレノイド構築メカニズムの解明」に向けた大きな進展であると言える。予定していた以上の成果を得られており、次年度以降の研究計画をスムーズに遂行できると考える。
2021年度に特定したピレノイド構成タンパク質の機能解析を進めていく。共免疫沈降法によるルビスコタンパク質との結合能の解析や、リコンビナントタンパク質を用いた酵素活性の解析、試験管内でのピレノイドの再構築実験などを行い、クロララクニオン藻のピレノイドで働く分子機構の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Gene Regulatory Mechanisms
巻: 1865 ページ: 194803~194803
10.1016/j.bbagrm.2022.194803
BMC Biology
巻: 19 ページ: 105
10.1186/s12915-021-01039-8
https://yhirakawa.weebly.com/