研究課題
アラニルtRNA合成酵素(AlaRS)はtRNA(Ala)中のG3:U70塩基対を特異的に認識して、tRNA(Ala)にAlaを結合させていることが長く知られてきたが、最小のゲノムサイズを有する古細菌Nanoarchaeum equitans (ナノアーキア)のAlaRSは、α鎖のみではG3:U70塩基対に依存しないアミノアシル化活性があり、β鎖が加わると初めてG3:U70塩基対に依存した活性を生み出すことが明らかになった。本研究では、【1】ナノアーキアAlaRS-αによるtRNA認識およびAla活性化の分子機構の解明、【2】ナノアーキアAlaRS-α、AlaRS-βによるG3:U70塩基対認識の分子機構の解明、を目標としているが、 今年度は、まず、β鎖において、G3:U70塩基対に関係すると考えられる残基の変異体を作製し、それらによるRNAミニヘリックス(tRNAの原始形とされるRNA)のアミノアシル化解析を行った。立体構造が既知の超好熱硫酸還元古細菌Archaeoglobus fulgidus、および、大腸菌のAlaRSとのアラインメント解析の結果、G3認識に関係していると考えられる、これら二者には保存されているアスパラギン酸残基が、ナノアーキアのAlaRS-βでは保存されておらず、イソロイシン残基になっていた。そこで、この部分のアラニン変異体を作製したところ、天然型と同様の活性を示したので、これまでにない認識機構の存在が示唆された。これらに関連して、同時にナノアーキアのチロシルtRNA合成酵素(TyrRS)によるtRNA(Tyr)のチロシル化反応や、ペプチド鎖を用いたアミノ酸の活性化の反応についても、相補的な研究を進め、学術論文や学会発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究推進の基盤となる実験系や材料の構築は順調に進んでいる。コロナ禍の中、予定通りに実験を進められない場合も出てきてはいるが、大きな遅れにはなっていないと考えられる。
G3認識に寄与するAlaRS-β上の残基を特定するために、更なる点変異体の作製を推進する。また、G3:U70塩基対に依存しないアミノアシル化活性を生み出すAlaRS-αの最小領域を特定するため、AlaRS-αの欠損変異体を用いた解析を行っていきたい。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
BIOSYSTEMS
巻: 208 ページ: 104481
10.1016/j.biosystems.2021.104481
BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS
巻: 575 ページ: 90-95
10.1016/j.bbrc.2021.08.070